「沢村賞」の選考委員会(土橋正幸委員長)が1日、都内で開かれ、セの最多勝、最優秀防御率、最多奪三振に輝いた広島前田健太投手(22)が初受賞した。セ投手の受賞は04年川上(当時中日)以来、6年ぶり。広島では91年佐々岡以来、6人目7度目で、球団史上最年少での受賞となった。秋季キャンプを行う宮崎・日南市内の天福球場で会見に臨んだ前田健は「光栄に思います。沢村賞に名前が毎年挙げられる投手になりたい」と話した。

 栄えある沢村賞の受賞は新たな夢の始まりだ。練習の合間に、野村監督から「おめでとう!」と朗報を伝えられた瞬間、前田健は表情をほころばせた。「とれると思ってなかったので、ビックリしている気持ちとうれしい気持ちがあります。今年始まる前に考えてもいなかった」。

 文句なしの好成績だった。最多勝(15勝)最優秀防御率(2・21)最多奪三振(174個)のリーグ3冠に輝いたほか、両リーグトップの215回2/3を投げるなど、大車輪の働きぶりだった。選考基準7項目で、クリアしていなかったのは完投10試合だけ(前田健は6完投)。大野投手チーフコーチも「防御率やイニングなどでみた内容ということかな。投球は素晴らしかった」とたたえた。

 オフも石原との最優秀バッテリー賞、地元の大阪・忠岡町での特別表彰の検討など「5冠」を手中へ。受賞ラッシュは止まらず、これで「6冠目」だ。同い年の楽天田中、来年プロに入ってくる早大・斎藤にも先んじた。それでも気を緩めない。

 「まだまだ歴代の方、現役でやっている沢村賞をとった方に実力的に及ばないと思う。タイトル争いであったり、沢村賞に名前が毎年(候補で)挙げられる投手になりたい。またいつか、受賞できればいい」。95、96年の巨人斎藤以来の2年連続受賞など、野望は限りなく大きい。若きエースが大投手への第1歩を刻んだ。【酒井俊作】

 [2010年11月2日8時48分

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