<日本シリーズ:中日7-8ロッテ>◇第7戦◇7日◇ナゴヤドーム
年俸440万円の伏兵が日本一を決めた。ロッテの岡田幸文外野手(26)が、7-7の延長12回2死二塁から右越え決勝三塁打を放った。育成選手からはい上がった2年目の苦労人が、第1戦で右太もも裏を肉離れして離脱した大松に代わって得たチャンスで大仕事を果たした。ルーキーのロッテ清田、中日大島ら新戦力が活躍した今シリーズを象徴する幕切れとなった。
イチ、ニのサンで振り抜いた打球が、右中間にはずんだ。快足を飛ばしたロッテ岡田は三塁に滑り込むと、左手を大きく振ってガッツポーズ。上川三塁コーチとハイタッチをかわした。延長12回表、死闘に終止符を打つ適時三塁打。中日浅尾を打ち崩す、会心の一打だった。
史上最大の下克上とも言われる逆転劇を完成させたのは、今季、育成からはい上がった男だった。「大先輩がたと同じ立場で、このグラウンドに立てるのをうれしく思うし、正直、信じられません」。去年の今ごろは千葉マリンでプレーするのを夢見てバットを振っていた。それが、日本一を決める立役者となった。信じられないのも無理はなかった。
岡田は悔しさを秘めて戦っていた。10月9日のCSファーストステージ初戦の西武戦でのことだ。同点に追いついた直後の9回1死、西岡の打球は左翼へのライナーとなった。しかし、ギャンブルスタートのサインが出ていた三塁走者の岡田は、大きく飛び出した。そこから戻ってホームを突いた。セーフのタイミングだったが、ブロックされアウトになった。
本来ならギャンブルのサインが出ていたため、責められることはない。対戦相手の西武の選手も、むしろ岡田の俊足に驚いたほど。しかし、試合には勝ったものの、翌日のミーティングでやり玉に挙がったのは岡田の走塁だった。ミスだと言われた。だが、岡田は理不尽ともいえる指摘をされてもめげなかった。「僕の武器は足なんで、ああいうプレーでもセーフにならないとダメだということだと思うんです。高いレベルを求められたんだと思います」と、プロ野球選手として、さらにレベルアップすることを誓った。
チームのためにも、やり返す機会をずっとうかがっていた。日本シリーズに入って、大松のケガにより、レギュラーメンバーとしてスタメンに名を連ねるようになった。きっかけは歓迎すべきものではなかったが、勝利に貢献して見返したい気持ちはずっと変わらなかった。試合後、日本一を喜ぶ左翼スタンドのファンから岡田コールを送られると、歓喜のバック宙でこたえた。史上最長の激闘シリーズ。最後の最後に岡田の見せ場は来た。悔しさをぶつけた分だけ、打球は飛んでいった。【竹内智信】
[2010年11月8日8時34分
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