巨人坂本勇人内野手(21)が12日、来季から「坂本ノート」の導入を検討していることを明かした。この日、青森県八戸市内で行われた野球教室に参加し、小中学生の野球少年に向け、メモを取ることの重要性を力説。最近では、プロ野球最多安打記録を達成した阪神マット・マートン外野手(29)が対戦後に投手の特徴を書き込むことが有名だが、ライバルに対抗した「坂本ノート」でリーグ一の安打王を目指す。

 マイクを握る手に力が入った。野球教室の締めのあいさつに立った坂本が選んだテーマは、メモを取ることの重要性だった。

 坂本

 人間は時間がたてば忘れてしまう生き物です。僕らプロ野球選手だってそう。今日教えてもらったことを、家に帰ってから必ずノートにメモしてください。ノートに書けば、後で見直したときに思い出すことができるから。

 野球人として、1人の人間として、子どもたちに贈ったメッセージだった。

 言葉の裏には、来季への秘策が隠されていた。これまでスケジュール帳に予定を記すことはあったが、プロ4年間でメモをつける習慣は皆無。来季に向け「阪神のマートンもやっているみたいですし、自分もノートをつくって、メモを取ることを考えたい」と「坂本ノート」導入に言及した。具体的な内容は思案中だが、本家マートン同様に、投手の特徴や自分が感じたことを書き連ねるとみられる。

 普段からスコアラーのデータを入念にチェック。感性で打つイメージもあるが、実は緻密(ちみつ)さを兼備する。今季は自己新の31本塁打を放ったが「パワーや技術が極端に上がったとかではないと思う。1つ挙げるなら、この投手はこういう軌道で投げてくるとか、このカウントならこのボールとか。対戦の中で得た情報や経験が大きいと思います」と最大の要因を「経験」と説明。抜群の洞察力から得た経験をノートに記していくことで、引きだしは確実に増える。

 安打数への意識は高かったが、マートンが新記録を樹立した今季、思いはさらに強くなった。シーズン中にも「ライバル球団でもあるし、同じ1番打者。比較されるし、やっぱり負けたくない」と漏らしたことがある。今季は坂本の171安打に対し、マートンは214安打で完敗。絶対的な王者からの安打王奪取へ-。その差を埋めるため、坂本がノートにペンを走らせる。【久保賢吾】

 [2010年12月13日12時5分

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