地味じゃない、本格派だった!

 阪神ドラフト1位の榎田大樹投手(24=東京ガス)が沖縄・宜野座キャンプ初日のブルペン投球で技巧派のイメージを大きく覆した。真弓明信監督(57)は「直球の走りがいい」と注目。ライバル球団スコアラーも要警戒し、即戦力左腕が堂々と開幕ローテ候補に名乗り出た。

 ドラ1左腕が輝いた。最後にブルペン入りした榎田が注目の的になったのは、出番が遅かったことが理由ではない。テンポよく、乾いた捕球音を響かせること42球。物おじせずに淡々と投げる姿に、頼もしさすら漂っていた。

 榎田

 ブルペンでは力んでしまいましたけど、全体的には順調です。ユニホームを着てやることで緊張感もあったけど、その中でしっかり体を動かせてよかったです。

 カーブ、スライダー、カットボール、フォーク、スクリューと多彩な変化球も全球種披露した。ネット越しに投球を見つめていた指揮官の心を揺さぶったのは、「無回転」で話題をさらっているナックルフォークでも、得意なスクリューでもない。投球の軸となるストレートだった。

 真弓監督

 直球の走り、進みがいいね。速さも感じる。低めに集まっていたし、この時期から評価するのもおかしいけど、計算できる。安定感がある。今のところ先発で。ローテーションに入ってもらいたい。

 最速148キロという直球も、試合ではコンスタントには140キロ台前半。だが出所が見にくく、手元で伸びる直球はスピードガン以上に威力がある。キャンプ初日にもかかわらずコーナーに投げ分けた制球力の高さも、戦力となりえる大きな資質だ。

 肝っ玉も大きい。投球の途中で吉田バッテリーコーチが右打席に乱入。「立つとは思っていなかったんですけど」と驚きながら、遠慮はしなかった。いきなり2球、内角低めに直球を投げ込み、打者役のコーチをのけぞらせた。にらみをきかされるとハッと我に戻り、純朴な顔で苦笑いして謝った。

 榎田

 キツイところをつかないと、自分の球は持っていかれる。コースを突けるように投げたいです。

 高校、大学までは全国では無名だった。社会人で名を上げ、24歳でプロ入りした遅咲きルーキー。甲子園準Vのドラフト2位一二三にスター性では主役を譲ってきたが、アマ球界NO・1左腕の肩書はダテじゃない。意外と走るストレートで、開幕ローテーションを射貫く。【鎌田真一郎】

 [2011年2月2日11時28分

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