現在の日本球界で最もハイレベルな開幕投手争いが幕を開けた。楽天の沖縄・久米島キャンプ第2クール2日目の6日、朝の散歩の声出しで田中将大投手(22)が「4年連続の岩隈さんから開幕の座を奪いたい」と宣言。岩隈久志投手(29)から指定席を奪う決意を、星野監督以下全選手の前で叫んだ。エース岩隈ももちろん、譲るつもりなど毛頭ない。調整ペースは互角。3月25日のロッテとの開幕戦(Kスタ宮城)に向け、しのぎの削り合いが繰り広げられる。

 マーくんがほえた。宿舎近く、真っ白な砂浜。風がそよぎ波の音が聞こえた。朝の静けさを破り、岩隈、永井らが声出しで目標を掲げた。頼もしい言葉に星野監督が目を細めた。でも、田中は先輩たちに1歩も引かない。トリで円陣の真ん中に進み出ると、両手を後ろに組み声を張り上げた。

 田中

 リーグ優勝、日本一はもちろん、開幕投手を4年連続の岩隈さんから奪い沢村賞を取ります!

 この日は今キャンプ最初の日曜日。詰め掛けた楽天愛にあふれるファンもドッと沸いた。近所のサトウキビ農園を営む中年の男性が「おお、威勢良いぞ!」と指笛を鳴らす。開幕投手争いのゴングが鳴った。

 突然の“宣戦布告”は前日から考えていたという。「開幕投手を狙います」と公言はしてきたが、競争相手を前に堂々たる宣言だった。「普通のことを言っても。みんなも喜ぶでしょう」とちゃめっ気を交えたが、本音は違う。「岩隈さんがいるうちに競って(開幕投手を)取りたい」。岩隈は今季中に海外FA権を得る見込み。メジャー挑戦なら今年が最後の機会。球団創設からチームを支え、08年には21勝で沢村賞に輝いた大きな存在に勝ちたい。飽くなき向上心だった。

 佐藤投手コーチは「オープン戦の防御率が良い方にするか」と笑顔で提案したが、極めてハイレベルな争いとなる。田中はケガなくフォーム修正も順調だ。この日はブルペンで60球。初めて変化球も交え、きっちり制御した。岩隈という大本命はいても、首脳陣の課す「中5日フル稼働で20勝」というノルマへ開幕戦から挑む可能性は十分ある。

 星野監督は「田中は明るいな。どんどん名乗り出て競争するのはいいことだ」と歓迎した。田中は「決めるのは周りの方。普通にやって、岩隈さんと競争になればいい」。自ら幕を開いた争いも、惑うことなく突き進む。【古川真弥】

 [2011年2月7日8時15分

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