プロ野球のセ、パ両リーグの理事会と実行委員会が17日、都内の日本野球機構(NPB)で行われ、今季開幕はセが予定通り3月25日、パは4月12日に延期すると決めて発表した。セの25日開幕については、選手会が反対したが押し切る形となった。加藤良三コミッショナーはセ、パともに全試合をチャリティー試合として開催するとしたが、東日本大震災の被害の全容が分からず、しかも、計画停電が実施される中での強行開幕。球場での大量の電力消費や、観客、選手の安全確保など問題は山積だ。

 NPB加藤コミッショナーが覚悟を決めたような表情で会見に臨んだ。「批判を受けるのは覚悟の上です。甘んじて受けるのが私の責務。議論を重ねた上で私どもはこう思うということで決定した」と話した。

 会見前に行われた緊急のセ理事会。15日の実行委員会で継続協議となっていた開幕日について、ヤクルト、横浜、中日が延期を望んだとみられる。しかし、その後の12球団実行委員会では「足並みをそろえよう」ということになり、最終的には“延期派”は折れた形となった。さらにその席で、加藤コミッショナーが12球団に全試合をチャリティー試合と銘打って行うよう要請し、了承された。

 チャリティー試合の開催で被災地へ金銭的バックアップができる。とはいえ、東北から首都圏にかけては福島原発への不安が広がり、電力供給問題なども続いている。労組プロ野球選手会は、あらためて「開幕延期」を12球団に要望。そんな状況でも、セは球場や試合時間を変更せずに開幕すると押し切った。加藤コミッショナーは「観客、選手の安全確保を第一とします。そして電力と放射能の問題については政府、監督省庁の指示に全面的に従っていきます」と話した。

 大規模停電が起きた場合について、セの新(あたらし)理事長(ヤクルト球団常務)は「そうなれば中止になる。中止が長引くこともあるだろう」としどろもどろ。「不測の事態については分かりません。情報を密にしながら対応したい」と話し、万が一の危機管理などについて、ほとんど話し合っていないことを露呈した。

 問題山積の中での船出となる。加藤コミッショナーは「困難な時に気力を振り絞って真剣勝負することがプロ野球に期待される社会的責務。それが被災者、被災地、そして日本のために貢献すること」と話したが、その道のりは簡単ではなさそうだ。【鳥谷越直子】