闘う選手会長がお目覚めだ。阪神新井貴浩内野手(34)が29日、中日との練習試合(京セラドーム大阪)で実戦25打席ぶりの安打を放った。内容のある5打席に本人も復調を実感。開幕問題で労組プロ野球選手会の会長としての激務が続き、プレーで精彩を欠いていたが、4・12の開幕に向けエンジンがかかってきた。

 もう迷いはない。これが新井の打球だ。ジャストミートできなくても全力で振り切った。中田賢のスライダーに差し込まれながら、センター前にライナーで運んだ。実戦25打席ぶりの安打。顔がほころんだ。

 「しばらく出ていなかったのでヒットが出たのはよかったですね。内容も上向きになってきた。自分のスイングができているのかな。今までが悪すぎた。兆しが出てきたのかな、という感じがしています」。

 16日オリックス戦の中前打以来、13日ぶりの安打だった。東日本大震災で開幕問題が浮上。選手会の先頭に立って12球団の選手の意見を取りまとめた。開幕延期とセ・パ同時開幕を求め、経営者サイドと交渉にあたった。まさに体を張った戦いだった。

 本人は「別問題」と譲らないが、影響はもろに出ていた。21日の日本ハムとのオープン戦の第2打席から、試合をまたいで5打席連続三振を喫するなど精彩を欠いた。24日に念願かない、セ・リーグの開幕がパと同じ4月12日に決定。会見した新井は安堵(あんど)の涙を浮かべた。

 ちょうど26日から3日間は実戦がなく、首脳陣からリフレッシュ指令が出された。軽い練習で済ませたことで、心と体をリセットした。再始動した前日28日はいきなり全体練習間に233スイング。この日も早出のランニングで備えた。

 連日、全国のお茶の間に届けられた、こわばった表情はどこにもない。試合前のウオーミングアップ。中日平田の打球の跳ね返りが、弟良太のおでこを直撃。だが心配するどころか、大爆笑で拍手し、平田に「グッド」と親指を立てた。ナインもつられて爆笑した。本来のムードメーカーに戻っていた。

 安打は初回だけだったが、5回は中堅へのライナー。7回は1死一、三塁から二ゴロで打点1。9回は岩瀬から強烈な遊直だ。真弓監督は「内容がよくなっている。まだまだ開幕まである。十分にいける」と話し、和田打撃コーチも「いろいろ考えてやれる状態になってきた。もう大丈夫」と胸をなで下ろした。

 試合後は緩いボールの打ち込みを行い、ポイントをチェック。野球に集中できている。「今から上がっていくだけです。1日1日を大事に、開幕までを過ごしていきたい」。つかみ取った「4・12」まで2週間。新井の前進を妨げるものはもうない。【柏原誠】