復活してよ、新井さん!

 7日に今年初めて4番を外された阪神新井貴浩内野手(34)に8日、次々と指導の手が伸びた。9日からヤクルト2連戦が行われる秋田での練習。真弓監督から木戸ヘッド、和田、片岡の両打撃コーチまで首脳陣の視線を独占。新井も時間を延長して異例の打ち込みを志願した。復調まで6番での出場が続きそうだが、みんなの願いは1つだ。

 最も気に掛けている真弓監督ですら驚いた。「まだ打つのか?」。帰り支度をした鳥谷は「打ち込みますねえ」とため息。新井は満面の笑みでうなずいた。若手野手が打ち終わったあとに、1人だけ2度目のフリー打撃を敢行した。志願の行動だった。

 15分間のスイングを終えたのは午後4時5分。4時から練習を控えていたヤクルトのスタッフが「いつ終わるのかな…」といった表情で眺めていた。

 名古屋から空路移動した秋田・こまちスタジアムで午後2時から行われた全体練習。不慣れな球場に慣れるのと、移動疲れをほぐすのが主な目的だが、新井は1球、1秒たりとも無駄にしなかった。首脳陣の期待も自身が背負う責任も痛いほど分かっていた。

 「練習です。練習をしっかりするしかない」。

 力強く言い切って、球場を立ち去った。

 1回目、2回目の打撃練習ではベタ付きした和田打撃コーチのほか、真弓監督、木戸ヘッドコーチらが入れ代わり立ち代わり至近距離からスイングを注視した。和田コーチはほぼ1球ごとに声をかけた。

 ティー打撃には片岡打撃コーチが密着した。指導内容は主に体重移動だったとみられる。「後ろの足(右足)を前にやってみろ」。イチローのように、スイングと同時に軸足を前に動かし、体の重心をずらした。前に突っ込むクセがある新井は本来、軸足を固定させてその場で回転するタイプ。イチローのような特異な打撃フォームをまねさせ、違う切り口で体重移動の感覚を身につけようとしたようだ。

 前日7日の中日戦。真弓監督はついに重い決断をした。昨年6月から続けてきた「4番」から降格。新井の復調を最優先に、打順変更に踏み切った。本人にも直接伝え、修正ポイントも確認し合った。

 指揮官は秋田での練習後「試合で(兆しが)出てこないとね」と話した。「一時的な措置の間に調子を上げてもらいたいか」との問いには「そうそう」と応じた。調子が戻り切るまでは、打順を下げて様子を見ることになりそうだ。

 新井は打順についての質問には答えず、笑顔を返すのみだった。本来の場所がどこか、誰もが分かっている。1日も早い打棒復活、4番復帰が待ち望まれている。【柏原誠】