<ロッテ0-2楽天>◇31日◇QVCマリン

 戦友にささげた。楽天山崎武司内野手(42)が4回1死二、三塁で、2点適時打を放った。貴重な先制点が決勝打となり、ロッテで完封勝ち。3試合連続打点をマークし、田中将大投手(22)に10勝目をプレゼントした。試合を決めた一振りは、引退した大相撲の大関魁皇(39)への惜別もこめていた。

 同志の思いを乗せた分だけ、打球は伸びた。4回1死二、三塁。ロッテ小野の代名詞・シュートが続いた3球目。厳しい内角攻めに、山崎はまだ万全でない右手で押し込む。小フライは完全にどん詰まりだったが、前進守備の遊撃手の頭を越えた。ことごとく凡退したロッテ打線と対照的に、少ないチャンスで4番の決定力を見せつけた。

 自ら「ブサイクな当たり」と表現した決勝打。豪快な笑みをたたえながらも、納得はしていない。「ケガから復帰して8試合だけど、1カ月のブランクがある。空振りでもこれでいい、と思えるスイングがない。いいところで1本出てるのが救いだな」。3試合連続打点をマークしながら、故障明けはまだ出ていない1発に思いをはせた。

 1軍に復帰した7月19日。本来なら喜ぶべき日に、残念な知らせがあった。親交のある大相撲の大関魁皇が引退した。昨年、サントリーの缶コーヒー「BOSS(ボス)」のCMで共演。CMテーマ「あきらめない美学」で現役へのこだわりを語り合い、共感した。土俵に立ち向かう大きな背中を励みにしてきただけに、ショックだった。引退会見の前日には、魁皇から電話も受けていた。

 人ごとではなかった。山崎は中学時代、野球部のかたわら、助っ人で出場した相撲で県大会を制し、全国大会に出場。相撲部屋からスカウトされたこともある。「本当に長い間、お疲れさまでした。僕たちには考えられないぐらいのケガとの闘い、大変だったと思います。残念ですが、ゆっくり体を休めてください。僕はもう少し頑張ってみます」。自分で選んだ野球の仕事で、もうひと踏ん張りの決意を新たにした。

 6月に右手薬指を剥離骨折し、リハビリに1カ月以上かかった。42歳の体は治りにくく、つらい日々を送った。「あんな生活と早くおさらばしたかった。サウナに入ってると、知らないおっさんから『ケガ、大丈夫?』って聞かれるし。町を歩いてたら、知らないおばさんから『オールスター出れるの?』って。ホテルの部屋にこもってもやることがない。引きこもりになるところだったよ」。

 常に覚悟は背負っている。オールスターにファン投票で出場し「これでオフに背広を着て球団に来てくれ、なんて言われたりしてな。オールスターに選ばれて引退するヤツなんていないんじゃないか?

 おれ、よく初めてのことやるからなあ。まあ、そうならんように頑張らんとな」。魁皇の思いも背負い、フルスイングを続ける。【柴田猛夫】