<中日0-1ヤクルト>◇2日◇ナゴヤドーム
ヤクルト小川淳司監督(53)が球団最速で100勝に到達した。エース石川雅規投手(31)が持ち味の粘りの投球で8回を0封。3回に4番畠山和洋内野手(28)の犠飛で奪った1点を、最後は守護神の林昌勇が守りきった。小川監督は、ヤクルト歴代の名監督の中に、はっきりとその名をしるした。
ヤクルトの監督として最速の100勝は誇れる記録だが、それに興味を持たないのが小川監督らしかった。そのことを聞かれても「オレは関係ないですよ。石川が勝ったのが本当に良かったです」と、6月25日の横浜戦以来となる白星を手にしたエースに拍手を送った。球場を引き揚げるバスに乗り込み、出発を待っていると、石川からウイニングボールを差し出された。それすらも、2度断った上に、隣の席の球団幹部にあげてしまった。目標はそこに置いていないという、強い意志を感じさせた。
監督として、勝利への強い執念を持たないといけないと、最近教えてもらったことがあるという。雑誌ナンバーに掲載されていたサッカーの岡田武史監督と内閣官房参与の田坂広志氏の対談からだった。「たとえば審判の誤審で負けたとして、運がなかったで片付けてはいけない。指揮官は運気を呼び込まないといけない。なるほどと思いました」。1回目はさらっと読み、2回目、ゆっくり読み直し、3回目はペンを片手に線を引きながら読んだ。野村克也氏の著書を風呂場で読み、ふやけさせたことはあっても、そんなことは初めてだった。
頭の中でしっかりと自分のものにして実践した。後半戦に臨むにあたって、練習の3時間も前にクラブハウスに来て監督室を掃除した。いらない資料を捨てるとともに、後半戦に向けて気持ちを切り替えた。ミーティングでは「優勝するんだという強い気持ちを持ってやっていこう」と呼びかけた。優勝したいという思いをはじめて強く表に出した。
この日は石川がその思いにこたえてくれた。選手会長でもある石川が言う。「みんな口にはしないけど、小川監督を胴上げしたいという気持ちがある。やりやすい環境をつくってくれて感謝している」。石川の粘投に宮本の美技。不調の林昌勇も気迫を表に出した。薄氷の勝利を得た運気は選手たちが運んでくれた。最速100勝の名誉はいらない。取りたいのは優勝という実だ。その意志が確実に選手に届いている。【竹内智信】



