日本ハムの2024年の育成1位で、高卒2年目の川勝空人投手(生光学園=19)は、今後飛躍する可能性が十分にあることを、この目で確かめることができた。
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先発する川勝の投球練習を見ていると、真っすぐが連続して高めに抜けていた。大丈夫か、と思わずにいられない。大変不勉強ながら、育成1位で高卒2年目のこの投手のピッチングを見るのは初めて。どんなピッチングをするのかというよりも、試合をつくれるかなと、不安が先行していた。
それが、試合が始まると、真っすぐが低めに制球されている。そしてすぐに気づかされた。特長のあるボールを操っていることに。真っすぐは最速154キロ。十分な球威があり、低めの真っすぐは申し分なかった。そして、その真っすぐと対をなすいわゆる縦スラが、素晴らしかった。
捕手目線から言わせてもらえば、おそらく打者は視界から消えていると感じているのではないか。ストライクゾーンからボールゾーンへ、急激に変化する。ポランコが空振り三振に終わったインローの縦スラは、ポランコの目には内角寄りの真っすぐに見えたのではないか。それがスイング時には一瞬にして消える。ワンバウンドの縦スラは、打者の視界から消える恐ろしいボールに、私の目には映った。
打者にとって仕留めることが困難なボールはタイミングが取れないこと。例えば、真っすぐを狙っているのに、打者の手元で伸びてくるように感じるから、振り遅れる。こうなると、タイミングを合わせることができないため、ヒットゾーンに運ぶ可能性は極めて低くなる。
次に困難なボールは、消えるボールと言えるだろう。正確に言えば、消えたように感じるボールということだ。こういう軌道を描くだろうと思ってスイングするのだが、バットは空を切る。このパターンの典型的な例は、千賀のおばけフォーク、と言えば読者の方もわかりやすいのではないか。
川勝の縦スラは、この類いのボールと言える。私は正直、大変驚いた。こんなボールを投げる投手がいるのかと、ひさしぶりに軽い衝撃を受けた。近くで見ていた編成担当に聞いたところ、この日のピッチングがこれまでの中でもっとも良かったという評価だった。4回1/3、75球を投げて被安打2、4奪三振、4四死球、無失点。
5回途中、制球が定まらなくなり、連続四球で降板。明確なスタミナ不足となったが、それはこれからのトレーニングと、登板を計画的に増やしていけば、十分に強化できると感じた。育成2年目ということだが、この投手には大いなる可能性を感じた。しっかりトレーニングを継続し、先発投手として実戦登板を踏めば、いずれ1軍でも力を発揮できるだろう。
根拠はある。川勝の最大の魅力は縦スラにあり、それと対を成す真っすぐにも十分な威力がある、ということだ。そして、打者の視界から消えると感じさせる縦スラは、3000回転数を記録していた。これはかなりのデータだろう。通常の投手のスライダーは、およそ2300回転ほどと聞く。この日の川勝は2800回転から、3000回転というなかなか聞いたことがない回転数をマークしていた。
この抜きんでた回転数があるからこそ、急激な変化量が発揮できるわけで、それは川勝にとっての大切な個性と言えるだろう。打者がストライクゾーンだと認識して、スイングを始動するも、肝心のベース板直前から急激に変化して、ベース板上ではボールゾーンからワンバウンドとなる。これでは、打者はお手上げだろう。
空振り三振した直後、ポランコは首をかしげていたが、無理もない。おそらく、真っすぐだと思ってスイングしたものの、想像を超える変化のために、何の球種だったのか三振直後は理解できなかったのだろう。もっとも、プロはここから研究するから、やがて川勝の縦スラもプロの世界では研究され対策されるようになる。
しかし、川勝には素晴らしい真っすぐがある。それが低めに安定して制球できれば、それと縦スラをセットで使えば、打者は縦スラを警戒していたとしても、かなりてこずるはずだ。真っすぐと、縦スラは、ベース板直前まで同じ軌道を通るからで、あとは捕手とのコンビネーションで、真っすぐと見せ掛けて縦スラ、縦スラを意識させて裏をかいて真っすぐ、こういう攻め方が有効になる。
近くで見ていた他球団の編成担当と川勝の縦スラで少し話が盛り上がったのだが、同じような縦スラとしてメジャーでも活躍した大塚晶文、元ロッテの小林雅英などの名前が挙がったが、私も聞いていて確かにそうだなと、思わずにいられなかった。
しっかり制球された縦スラは私が確認した中では8球。うちゴロに仕留めたのが3球、見逃しが2球、空振りが2球、ファウル1球という内訳だった。
ストライクからボールゾーンへ曲がる勝負球と、高めから、低めストライクゾーンへ決まるカウント球の2種類を投げ分けていた。低め真っすぐと、この縦スラをしっかりコントロールすることができれば、この投手の未来は非常に楽しみだと感じた。(日刊スポーツ評論家)





