<楽天4-1西武>◇2日◇Kスタ宮城

 楽天の必殺仕事人と、悪球打ちの天才が、西武のエース涌井を攻略した。1-1の同点で迎えた6回、チャンスに強い高須洋介内野手(35)の適時打で勝ち越し。さらに、中村真人外野手(29)がボール球を左中間に運ぶ適時二塁打を放ち、この回に3点を挙げ、ルーキー塩見の完投勝ちをアシストした。高須はこの日が誕生日だった長男に、決勝打をプレゼントした。

 必殺仕事人の血が騒いだ。同点の6回無死一塁。名手高須が珍しく、送りバントを2度ファウルした。4球目が暴投、相手失策で、場面は無死三塁に変わった。続けて失敗は、許されない。普段以上の集中力を研ぎ澄ました打球は、涌井の足元を抜け、鋭くセンターへ転がった。勝ち越し打に沸くKスタ宮城で1人だけ、すまし顔。責任感の強さがにじみ出ていた。

 心は熱く、頭は冷静だった。打席では、何年も対戦してきた涌井との勝負を思い返した。数々の駆け引き、心理戦を繰り広げてきた歴史をひもとき、狙い球を絞った。「前の打席もやられていたし、今までもそうだった。勝負球はシュートしかない」。引っかけて暴投した直後でも構わず、内角にくる。読みが的中し、甘く入った低めを逃さなかった。

 勝負師のひと振りに、悪球打ち名人が続いた。2死二、三塁。見逃せばボール球を、中村が左中間に2点適時二塁打を運んだ。イメージはできていた。試合前のバント練習で、聖沢に頼まれて涌井のモノマネをして投球した。「チームじゃ一番似てると思いますよ。でもレパートリーだと、朝井(現巨人)にかないませんでしたね」。似せるためによく観察し、研究した。「チェンジアップは捨てました。真っすぐか、スライダーに張っていた」と球筋も当然、インプットしていた。

 内角に食い込んできたスライダーは低めに外れるボール球。バットを真下に振り下ろすような窮屈なフォームで、逆方向に打ち返す芸当は、誰にもマネできない。「内角をつまらせて、レフトに運ぶ練習は意識してやってます。僕の性格と同じで、いい感じで曲がってきたので、ボールに好意を持つことができました」のコメントもユーモアたっぷり。もうひと押しが欲しかった星野監督は「1点と3点じゃ、えらい違う。よくやった」と技ありの一打にご満悦だった。

 試練の13連戦初戦で、相手エースをたたいた白星は価値が高い。高須は決勝打に「あれじゃ取り返せない」と試合後も淡々としていたが、帰りの駐車場で緊張感から解放された。観戦した息子は、この日が8歳の誕生日。最愛の家族の出迎えを受け、ねぎらいの言葉にパパのほおが少しだけゆるんだ。【柴田猛夫】