<ヤクルト4-2阪神>◇9日◇神宮

 館やん、男だ!

 ヤクルトの館山昌平投手(30)が2位阪神との直接対決で気迫の投球をみせた。右手中指と薬指の血行障害が完治しないまま、この日1軍に再昇格。本来の球威が戻らないなかでも8回途中を2失点に抑え、チームに勝利を呼び込んだ。由規投手(21)が右肩の張りで、館山に代わって登録抹消。けが人が相次ぐ苦しい台所事情に自らの身を削りながら、頼れる右腕が阪神とのゲーム差を5に広げた。

 首を5度振り、1度プレートを外して、また5度振った。館山のもとに、捕手の相川が駆け寄って、サインを確認する。1点リードの8回無死、代打金本をカウント2ボール2ストライクと追い込んだ。「ずっとチェンジアップのサインが出てこなかったので首を振りました」。6球目。真ん中高めの123キロで、見逃し三振に切った。

 3球目のフォークは、右翼ポール際に、あわや同点弾の大飛球にされた。フォーク、チェンジアップは同じ沈む系の球種だが、明確な線引きがある。「回転軸が違う。入ってくるか、逃げていくか。僕の中ではまったく別の球種」と言う。館山らしく、細心の注意でヤマ場を切り抜けた。

 右手中指、薬指の血行障害で8月20日に登録を抹消され、中28日の1軍マウンドだった。1回に145キロを1球マークしたが、終盤の直球は130キロ台が主だった。「真っすぐが走らないなら、変化球でいく。変化球がコントロールできなかったら、頑張って低めに集める」と徹底した。試合中に試行錯誤を繰り返し、2失点で投げ抜いた。

 指は決して完治していない。投球後は中指の指先が冷たいままの状態が続いた。完治のためには右肘、右手、2カ所の手術が必要になる。今オフは右肘の手術を行う方針だが、ボールを握る繊細な指先は検討を続ける。シーズン序盤なら即手術を決断したが、今は優勝争いの真っ最中。ベストではない状態の中で、最善の投球を模索した。

 小川監督ら首脳陣は、1軍復帰は館山の感覚次第と繰り返した。登録抹消になった当初はシュートを投げると、1球で指が冷たくなった。それが復帰戦となった2日のイースタン・リーグのロッテ戦ではシュートを投げても指の悪化がなかった。球種の制限がなくなったことで復帰を決断。これ以上、状態は劇的に良化しない。チームのために、1軍復帰の道を選んだ。

 今季チームが3勝10敗と苦しんできた阪神に、これで昨年から5連勝。由規が右肩の張りで登録抹消になった日に、優勝へのターニングポイントになる可能性漂う1勝をつかんだ。「何とかゲームつくることができました」。投げる以上は、指の状態は一切言い訳にしない。おとこ気あふれる101球で、大きな流れを呼び込んだ。【前田祐輔】