中日は22日、落合博満監督(57)が今季限りで退団し、後任に球団OBで元監督の高木守道氏(70)が就任すると発表した。落合監督はシーズン終了まで指揮を執り、高木新監督は2年を基本にした複数年契約が濃厚。常勝監督の交代を、優勝争いが佳境の時期の、しかも1、2位直接対決の直前に発表する異例の事態に、球団内外は大きく揺れた。

 ペナントレースを左右する大事な4連戦の前に衝撃が走った。ヤクルト戦前の午後3時、ナゴヤドームで会見を行った佐藤球団代表が、3年契約最終年を迎えた落合監督が今季限りで退団し、後任に高木氏が就任することを発表した。契約期間は10月31日までとなっており、クライマックスシリーズ、日本シリーズに出場した場合は監督契約をその都度結ぶ。

 球団は具体的に退任通告した日時は明かさなかったが、舞台裏はドタバタだった。前日夜までに白井オーナーから東京にいる落合監督に会談の旨を伝えられたが、前日は台風15号の影響で移動できず。同監督はこの日の早朝の新幹線で名古屋へ到着。台風余波で新幹線は満員、新横浜から立ちっぱなしで名古屋に到着した指揮官に対して同オーナーは「ご苦労さん。落合時代を築いてくれた。大変よくやってくれた。最後の花道だと思ってやってくれ」と言葉を掛けた。指揮官は「はい。わかりました」と即答したという。

 04年の就任から優勝3度、日本一1度、今季も優勝を争っている常勝指揮官の退任を、連覇をかけたヤクルトとの大一番直前というタイミングで発表した。「私は26日でも構わないと思ったが、NPB(日本野球機構)との関係、他の人事も関係してくる。フロントは早く決めないと、と言うから」。白井オーナーはヤクルト戦後に発表という腹づもりだったと明かしたが、佐藤球団代表は「(不満が出るのは)否定しない。ただ、選手たちは何としても監督を胴上げしようと頑張ってくれると信じている」と説明した。契約上、満了の1カ月前までに続投か退任かの結論を出す必要があったともいう。

 球団発表から約7時間後。苦しみながらヤクルトに3-2で逆転勝ちし、「ナゴヤドームの試合だな」と言って立ち去ろうとした落合監督は、退団発表について問われると笑みを浮かべ言った。

 「契約書通り。この世界はそういう世界だ」

 3年、2年、3年、これまで3度の契約を交わしたが、契約期限が来れば、いつも任期満了の覚悟を持ってきた。今季も9月に入り、プロ1年目から監督としての現在までのすべての成績を書き出した。「首を洗って待つ」。覚悟はできていた。異例のタイミングでの退任発表を落合監督は静かに受け止めた。

 ◆落合博満(おちあい・ひろみつ)1953年(昭28)12月9日、秋田県生まれ。秋田工-東洋大(中退)-東芝府中を経て78年ドラフト3位でロッテ入団。内野手。81年首位打者となり、82、85、86年に3冠王。首位打者、本塁打王、打点王を各5度。最高出塁率7度。MVP2度。86年オフにトレードで中日へ移籍。93年オフにFAで巨人入り。96年オフに自由契約で日本ハム移籍。98年引退。通算2236試合、2371安打、打率3割1分1厘、510本塁打、1564打点。04年から中日監督を務め04、06、10年にセ・リーグ優勝。07年はリーグ2位も53年ぶりに日本シリーズ優勝。監督通算614勝484敗27分け(22日現在)。11年野球殿堂入り。今季推定年俸3億円。