<ヤクルト8-5阪神>◇28日◇神宮

 再び、マジック点灯モードに入った。ヤクルトが阪神に逆転勝ち。2位中日が引き分けたため、ゲーム差を3に広げた。1点を追う6回、ウラディミール・バレンティン外野手(27)の29号逆転2ランなど、一挙6点で虎を粉砕した。1軍復帰登板となった「バカボン」七条がKOされながらも負けない強運ぶりを発揮。前日28日に先発した村中が左肩の張りで出場選手登録を抹消されるなど、チームはけが人続出。そんな状況でも、燕軍団は負けない。

 漆黒のバットを体に巻き付けるように、バレンティンがフルスイングを決める。カリブ海で生まれ育ち、芯に当たれば、どこまでも飛びそうなパワーは誰にも負けない。1点を追う6回無死一塁、外角に入った阪神秋山の直球をとらえた。

 「傷だらけ」のチームを救う逆転の29号2ランが左中間に飛び込む。阪神ファンが集う左翼席は沈黙。「やっと芯に当たってくれました。久しぶりに自分らしい打球が打てて、チョーキモチイイ!」と大興奮だ。

 夏から秋への季節の変わり目に、チームは異常事態に陥っていた。この日、左肩の張りで村中が今季2度目の抹消。エース石川、中継ぎ左腕の新人久古は発熱により、2日連続で神宮に現れていない。右肩痛の由規は復帰のメドが立たず、バーネットは右手首剥離骨折で離脱中。けが人は館山、相川、川本…。とてもまともに戦える状況ではなかった。

 ならば、打つしかない。助っ人の特大弾の直後は1死二塁から相川が左越え二塁打、青木が2点適時三塁打で続いた。一挙6点で試合を決めた。

 バレンティンは来月女児が誕生する予定。予定日は10月9~16日の期間で、順当なら優勝が決まる可能性が高い1週間だ。「昨日エージェント(代理人)とも相談した。帰国しようかとも考えたけど、チームメートとここにいて最後まで戦いたいんだ」。熱い思いで、日本に残ることを決断。愛娘との対面は、優勝を決めてからゆっくりと果たす覚悟だ。

 だから、もう走塁だって手は抜かない。2回2死満塁では七条の捕飛を阪神藤井彰が落球。失策に備え、二塁走者として、全力疾走でホームにかえった。2日からの巨人3連戦で、走塁を怠りスタメンから外された姿は今はない。小川監督は「ホームランはすごいけど、彼も打てない時がある。チームが勝つために、一生懸命やっているのはいい傾向」とたたえた。

 打線の力で「バカボン」七条の不敗神話は10試合に伸びた。だが、降板後に即2軍降格が決まり、連戦が続く今後は先発投手のやりくりがさらに厳しくなる。青木は「今までピッチャーに助けてもらってきている。打線が奮起できるようにしたい」と言った。いない選手を嘆いても仕方ない。助っ人の1発をきっかけに、打線がつながって勝った。逆転劇に、小川ヤクルトの強さが詰まっていた。【前田祐輔】