日米球団が注目する横浜の最速157キロ右腕、織田翔希投手(3年)の投球フォームを日刊スポーツ評論家の上原浩治氏が分析しました。超高校級のスピードを生み出せる特長はどこにあるのか。巨人やレッドソックスなどで活躍した上原氏は近い将来160キロ出し、“大怪物”になるポテンシャルがあると指摘した。
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何げなく立っているだけの<1>だが、長身で手足が長く、ピッチャーとして理想的な体形をしている。スタンス幅は狭く、やや左足のつま先を内側に入れているが、これは<2>で左足を上げる時、やや内側に絞るようにして、真っすぐに上げたいからだろう。
そして軸足の右ひざと上げた左ひざが、前後で重なる位置にしている。真っすぐに立てていて、軸がぶれていない。この形から<3>では、左のスパイクを引くようにして、お尻だけが投げる方向にスライドするように動きはじめている。自然な流れで、まったく力んだ様子はない。
<4>ではボールを持っている手を体の横にそのまま真下に落としている。今は腕が振り遅れないようにするため、下まで落としきらずにショートアームで投げる投手が多くなっているが、右腕をリラックスさせて使いたいのだろう。ショートアームはボールを落としきらずに途中で止めるため、必要以上に力が入ってしまう欠点がある。ここまでは完璧な動きだと思う。
少し気になるのが、<5>での右腕の動き。ボールを持つ手が、やや背中側に入りすぎてしまっている。本人は動かしている意識はないのだろうが、股関節を内側に絞るようにして使うため、どうしても体が捻れる分だけ背中側に入ってしまうのだと思う。
ただ、この時の下半身の使い方が、高校生離れしたスピードを生んでいる要因のひとつ。右の太もも付けねに力がたまっているし、踏み出していく左足のスパイクの裏が投げる方向にめくれるように使えている。強靱(きょうじん)な下半身の力がなければ、こうした動きはできない。
試合での投球を見させてもらったが、やや高めに抜ける球が多かった。これは右腕が背中側に入る分、腕が振り遅れ気味になるから。並の投手ならこのタイミングでも球の押さえは利くだろうが、下半身のパワーが尋常ではない。その分だけ押さえが利かなくなる球が出てくるのだと思う。
ただ、この欠点を補えるだけの器用さも持っている。<6>では右ひじを上げるときにボールを持つ右手も素早く上がっている。私自身もボールを持つ手を体の横に落とし切って投げるタイプだったが、右ひじを上げるときの反動を使って、ボールを持つ手が右ひじの高さを追い越すように素早く上げていた。右ひじだけで上げていこうとすると、どうしても右ひじがロックして、左肩を開かせて使わないと上がらなくなる。
右肩の関節が柔らかく、ボールを持つ手が右ひじの高さを追い越すように使えているから<7>のトップを作れる。右ひじは右肩より下の位置にあり、腕を強く振れる理想的な形ができている。左肩も開きすぎないように押さえられている。
<8>を見ても右腕から右足までの曲線が深いのが分かるだろう。「U」の字を横にしたような形で全身がきれいにしなっている。これは速い真っすぐを投げる投手の特徴だとも言える。
リリースの<9>写真がフォークボールだったのが残念でならない。投球フォームでのリリースは一番大事な部分。真っすぐとフォークは同じフォームで投げやすいが、微妙な違いはある。フォークだから特に問題はないが、真っすぐでのリリースポイントが見たかった。
<10>と<11>でも頭の位置がほとんどブレていない。目線は分からないが、顔の向いている方向から想像しても、投げるポイントから視線がブレていない。投げ終わってからの<12>で、少し一塁側に流れ気味になっている。もっと体が正対するように前に出るのが理想だが、十分な許容範囲で収まっている。
総合的に見ると、申し分ないどころか、高校生とは思えないような素晴らしい投球フォームをしている。少し注文を付けさせてもらった部分も、投げ込んでいくうちに上半身と下半身のタイミングが合ってくると思う。大事なのはリリースするときのタイミング。「ここに投げる」というより「ここで離せばここにいく」という感覚を身につけること。まだ体の線が細いだけに、このままでも1年後から2年後に160キロ以上のスピードは出るだろう。そしてリリースするタイミングが合うようになれば、制球力はもっと上がる。とんでもない投手に成長する可能性を秘めている。

