<中日4-3ヤクルト>◇12日◇ナゴヤドーム

 苦しみ抜いた男が優勝をたぐり寄せた。中日和田一浩外野手(39)が8回、勝負を決める12号3ランを放ち、優勝マジック4を点灯させた。昨季MVPの和田は今季、落合博満監督(57)と二人三脚で打撃改造に挑戦したが、まさかの大不振に陥った。だが、今季限りで退任する指揮官の有終Vへ突き進む終盤戦で力を発揮。8年目の集大成を迎えた落合中日が、明日14日にも球団史上初の連覇を達成する。

 1球ごとに勝敗が、優勝の行方が変わる。そんな緊迫感が和田の感覚を研ぎ澄ました。1-0で迎えた8回2死一、二塁、ヤクルト松岡の内角膝元に落ちるフォークに反応した。「こういう戦いで甘いところはこない。だったら開き直っていこうと。狙いは真っすぐ1本だったけど、体が反応しました。1本でも多く、チームに貢献できれば、それでいいですから…」と控えめだった。お立ち台で万雷の拍手を浴びても、満面の笑みはなかった。

 落合監督から最も信頼されるが、大不振に陥った。開幕前、理想のスイングを求めてオープン気味のスタンスを完全スクエアにする打撃改造に着手した。「10割打てたわけじゃない。現役のうちは、そこを目指していかないと」。上だけを見ていたはずだった。だが、開幕と同時に本来の打球は影を潜め、打率は2割前後を推移した。飛ばない統一球の影響、視力の低下。そして4番から外された。

 9月17日、巨人戦、初めてサングラスをかけて打席に入った和田は無安打。試合後、東京ドームのロッカー室ではスタッフ全員が和田の今後について話し合った。その席で、和田は落合監督に視力の異常を訴える。「だったら、危なくて打席には立てないな」という指揮官の決断でFA移籍後、初めての「2軍降格」が決まった。その直後の同22日、2軍のナゴヤ球場で落合監督退任の発表を聞いた。打撃の師と仰ぐ指揮官とは今季限り。「何も言えない…」。短い言葉に決意がにじんだ。その1週間後、優勝争いまっただ中の1軍に戻ると、鬼気迫る活躍で退任Vの花道を現実にしようとしている。

 「このままでいいんだろうけど、ゲームセットというまで気を抜いちゃだめだな」。9回に1点差とされる展開に落合監督はこう言い残した。それでも、ともに悩み続けた男の1発で見えてきた花道。ゴールはもうすぐだ。【鈴木忠平】