<セCSファイナルステージ:中日2-1ヤクルト>◇第1戦◇2日◇ナゴヤドーム

 これぞ、落合野球だ!

 中日落合博満監督(57)が完全制覇での日本一という最高の花道へ向け、第1歩を踏み出した。巨人を倒して勝ち上がってきたヤクルト打線をわずか1点に封じた。最終回のピンチでは自らマウンドに出向き、浅尾から守護神・岩瀬にスイッチして逃げ切った。8年間貫いてきた「守りの野球」で重要な初戦を快勝。日本シリーズへあと2勝とした。

 1点リードの9回2死一、二塁。2イニング目に入った浅尾が、ピンチを迎えると落合監督がベンチから立ち上がった。ナインの不安をかき消すように、穏やかな笑みをたたえながらゆっくりとマウンドへ向かった。諭すように浅尾に話しかけると交代を告げた。

 「ピッチャー、岩瀬」

 浅尾はシーズン79試合に登板して防御率0・41、優勝に大きく貢献した絶対的なセットアッパー。それでも指揮官が最後を託したのは、この男だった。

 「お前、こういうの慣れてるだろ」-

 マウンドにきた守護神に笑顔でこう言うと、ポンと尻をたたいた。8年間、常に期待に応え続けてくれた左腕へ、指揮官はこの日も最大限の信頼を示した。

 一打同点の修羅場を任された岩瀬も冷静だった。1発があるホワイトセルに対して初球ボールで入ると、2球目のシュートで詰まらせて三ゴロに打ち取った。リーグ王者に与えられる1勝のアドバンテージを生かすためにも絶対に取りたかった初戦。重要な試合を制した原動力は「守りの野球」だった。

 「9回はいつでもいけるようにしておけということだった。あそこは、もう、開き直った」

 岩瀬は少し、ホッとしたように振り返った。落合監督が就任した04年からストッパーを任された。「いつも、一番きつい思いをしているのは岩瀬なんだ」。今季、通算300セーブを達成したが、今でもその信頼は揺るぎない。

 そんな守護神は今シリーズに期するものがあった。リーグ優勝を決めた10月18日横浜戦(横浜)、3-3同点の延長10回に浅尾が走者を背負った。だが、ベンチは浅尾続投を決断。これまで常に自分の“指定席”だった胴上げ投手になれなかった。

 「優勝できて、うれしい。ただ、最後にマウンドにいられなかったので手放しでは喜べない」

 優勝後には素直な思いを口にした。それでも、やはり、やるか、やられるかの短期決戦で指揮官が最後を託したのは岩瀬だった。

 「いいんじゃないか。2週間ぶりだから、どんなもんかなと思っていたけど、余計な心配だったな。ちゃんと疲れはとれてる」

 じっと選手の動きを見守ってきた落合監督は、この日も短く会見を締めた。チームへの信頼は不変だ。あと2勝。最高の花道を飾る舞台、日本シリーズへ力強い1歩を踏み出した。【鈴木忠平】