<セCSファイナルステージ:中日5-1ヤクルト>◇第4戦◇5日◇ナゴヤドーム

 中日が日本シリーズへ王手をかけた。1回、平田良介外野手(23)が満塁で走者一掃の二塁打を放つなど、いきなり4点を奪った。2、3戦と1点止まりだった打線が今シリーズ最多5得点。前夜、気負いを指摘した落合博満監督(57)も納得の表情だった。アドバンテージの1勝を含めて3勝2敗。今日6日にも2年連続の日本シリーズ進出が決まる。

 選手をしばっていた“鎖”が外れた。1回、ブランコの適時打で1点を先制して、なお2死満塁。打席には平田。絶好機にもかかわらず、なぜかスタンドはざわめいていた。打線は連夜の1点止まり、そして、平田は8打席連続無安打だったからだ。だが、チームきっての“天然系”は前向きだった。バックスクリーンに表示される「・000」の数字を逆に、発奮材料にした。

 「運に見放されたかなと思っていました。ただ、笑っていないと運は向いてこない。0割0分0厘でしたけど、0は無ではなく未知数という意味ですから」

 フルカウント。制球に苦しむヤクルト赤川の直球を狙っていた。打球は右中間を真っ二つに破るタイムリー二塁打。走者を一掃した。金縛りに遭ったように沈黙していた打線が、初回にいきなり勝負を決める4点を奪った。

 「いいんじゃないでしょうか。これで。ちゃんと皆さんがメッセージを送ってくれるから助かる」。落合監督は、今シリーズ最多5点を奪った打線に満足そうだった。「気持ちが引っ込み過ぎてもだめ。今みたいに出過ぎてもだめ」。前夜に残したコメントは各メディアで報道された。そして、打線は気負いが抜けたようにつながった。

 平田も前夜までは落ち込んでいた。CSでもスタメンを任されながら、打てない。打ちたい思いばかりが募った。そんな時、声をかけられた。「負けたら俺らのせいだから。お前は気にするな」-。荒木だった。この言葉に救われた。

 「さすがに僕も落ちていました。結構、繊細なんで、平田良介は。ただ、先輩が声をかけて下さって、楽に考えられました」

 指揮官も、選手も。チーム一丸となって重圧を打ち破った。日本シリーズへあと1つ。もう足踏みする必要はない。【鈴木忠平】

 ▼中日が日本シリーズ出場に王手をかけた。プレーオフ、CSで先に王手をかけた20チームのうち今年のソフトバンクまで18チームがシリーズに進出。出場を逃したのは77年ロッテ、10年ソフトバンクだけで、セ・リーグでは先に王手から敗退した例はない。この日は中日が初回に4点。これで中日は本拠地のナゴヤドームで先取点を挙げた試合は8月4日ヤクルト戦から3分けを挟んで19連勝となった。セ・リーグのファイナルSは昨年<1>戦から先制したチームがすべて勝っており、今日の<5>戦はどちらが先取点を奪うか。