いよいよ最後の花道が幕を開ける。中日落合博満監督(57)が“戦闘モード”に突入した。日本シリーズを翌日に控えた11日、福岡ヤフードームで行われた監督会議の中でビデオ判定と危険球を巡って審判を“質問攻め”にした。就任1年目の04年から8年間も待ち望んだ「ホークス」との決戦を前に、憂いのない環境を整え、いざ決戦だ。

 口火を切ったのはやはり落合監督だった。両軍の監督と主要コーチがそろった監督会議、質疑応答になると真っ先にこう言った。「ここ何とかして。日本シリーズなんだから」。

 落合監督が指摘したのはビデオ判定の規定。「責任審判員が必要と認めた場合に限り使用する」と書かれた項目に「オレであれ、秋山であれ、要求したら審判の判断ではなく、必ずやるということにしてほしい。もし、やらずに後で(テレビ中継などの)映像が出たら審判がたたかれるんだ」と要求した。

 井野審判部長がこの申し出を承諾し、どちらかの監督からリクエストがあれば必ずビデオ判定が実施されることになった。ただ、これで終わりではない。

 さらに続けて「危険球なんだけど、真っすぐは退場?」。頭部死球による退場について球種による見解を確認した。「フォークの抜けは?」「スライダーの抜けは?」と突っ込み、井野審判部長を苦笑いさせた。秋山監督も途中で質問したが、昨年に続き、落合監督の“独壇場”となった。勝敗を分ける不確定要素を少しでもなくすために妥協はなかった。それもそのはず、指揮官にとって、待ち望んだ最高の舞台なのだ。

 監督会議を終えると秋山監督の肩を抱き、「8年待ったぞ。王さんの時からだからな」と言った。就任1年目の04年、当時のダイエー王監督と日本シリーズで戦う約束を交わしたが、ダイエーがプレーオフで敗れ、実現しなかった。昨年も同様だった。やっと整った舞台だからこそ、憂いなく戦いたかった。

 その後の監督会見では、シーズン終盤の13連戦の疲労が抜けてきたと説明し、チーム状態に自信をのぞかせた。「彼らは13連戦の経験がなかった。相当疲れたんだろうし、CSの時もまだ抜けていなかった。ここにきてようやくいい状態になってきたかな」。ただ、手の内は明かさない。ポイントを聞かれると、「あっても言えません。言うべきじゃないと思います。皆さんにそれを言って隙を与えることもない」と、あっさり拒否した。独特のピリピリしたムードを漂わせ、頭脳をフル回転させ始めた。【鈴木忠平】