出た!

 虎1号!

 阪神ドラフト1位伊藤隼太外野手(22=慶大)が29日、沖縄・宜野座合同自主トレのフリー打撃でプロ初柵越えをマークした。右中間に、推定115メートルの弾丸ライナーで着弾。ノーアーチ調整を予告していたが、ツボにはまれば飛ぶことを実証した。愛用する枕のメーカーがCM起用に興味を示すなど、ハヤタの注目度は高まるばかりだ。

 いつものように首を左へカクンと傾けて、内寄りの球をミートした。右腕の水落打撃投手の15球目。腰をクルッと回転させてはじき返した。沖縄の青い空を切り裂き、ライナー性の打球がやや右翼寄りの芝生ではずんだ。

 伊藤隼

 (柵越え)ゼロでいくって言ってたんですけどね。狙ったわけじゃない。たまたまインコースにきて、回転して打った感じです。

 プロ初の柵越えをマークしても、サラリと言ってのけた。逆方向打ちを徹底した合同自主トレ初日の27日に「何スイングで何本とか期待しないでください。0で刻んでいくので」と“ノーアーチ調整”宣言をしていたが、ツボにはまれば圧巻の弾道で1号をマーク。この日は中堅から右翼方向に引っ張り、鋭い打球も飛ばした。

 慶大時代は4年間で10本塁打を放った。3年秋と4年春に東京6大学リーグの本塁打王に輝き“大学NO・1スラッガー”の異名を取ったが、実は柵越えにこだわりはないという。

 伊藤隼

 ライナー、低いので間を抜くのが基本。フェンスを越えたら本塁打になる。本塁打で注目されていたけど、自分自身はそうは思っていない。飛ばす人はどんだけでも飛ばしますから。

 むしろ今こだわっているのは相棒選び。ティー打撃では90スイング中、7度もバットを変えた。使用したのはメーカーや素材が異なる3本。長さ86センチ、約900グラムの基本形は変わらないが、しっくりくる1本を探している段階だ。屋外フリー打撃でも投手の左右によってバットを変えるこだわりようだった。

 伊藤隼

 打った感じを確かめている。投手とか自分の調子で使い分けたくない。(素材の)産地や工場によっても違う。やわらかさの中に強さがほしい。キャンプ中に、どれでいくと決めたいですね。

 シュアな打撃が持ち味の中距離砲だが、虎1号に光が見えた。その素質に陰りは一切ない。キャンプインまで、あと2日。汗にまみれる隼太の表情は、沖縄の太陽のように輝いている。【岡本亜貴子】