3年目左腕にブレークの予感だ。ソフトバンク川原弘之投手(20)が2日、日刊スポーツ評論家を務める工藤公康氏(48)の指導を受けた。ブルペンで89球。昨年のフレッシュオールスターで155キロをマークした期待の星が、224勝左腕の指南を受け、開幕ローテーション入りを目指す。

 マウンド脇に立っていた工藤氏の、川原を見つめる視線が次第に熱くなっていった。そばには秋山監督、小川2軍監督、高山投手コーチもいる。「すごいよ、モノが違うね」。指導を終えた工藤氏は思わず感嘆した。

 川原は3年目の今年、最大のチャンスを迎えている。初めてA組入りしたキャンプ2日目に、29年で224勝をあげた工藤氏から直接指導を受ける機会を得た。

 「足の置き方がプレートと並行になるようにということと、足の上げ方のタイミングを教わりました。リズムよく上げなさいと言われました」

 指導を受けた後半は制球が定まり「途中で感覚が良くなってきて、だいぶ感覚が変わった気がします。今年一番良かったぐらいでした」と自身も驚きの効果が表れた。さらに変化球のリリースのイメージも伝授。

 「カーブはピュン、スライダーはピュッと言われたんです。力んで投げるんじゃなくて、そういうイメージでと」

 昼食後は再び「補講」もあった。工藤氏が正面に立ち、シャドーピッチングでフォームをチェック。幼い頃、テレビで見て憧れていた工藤氏から直接指導を受け「楽しんでやれました。今日教わったことが、これから役立つと思います。忘れないように練習します」。高山投手コーチも「アイツにとっては神様みたいなもの。顔がパッと明るくなった。刺激になるだろうね」と飛躍を期待した。

 2年目まで1軍登録はない。地道に体づくりに励み、体重は高校時代から20キロ近く増えた。昨年のフレッシュオールスターでは155キロを計測。昨オフは念願だったプエルトリコのウインターリーグにも参加。ツーシームとカットボールを習得し、投球の幅も広がった。

 秋山監督からも「打撃と同じで下半身が大事だぞ」とアドバイスを受けた。「これまで監督に直接見てもらえることがなかったので、見てもらえるだけでうれしい」。謙虚に話した20歳の左腕が、ローテ入りのサバイバルレースに挑む。【前田泰子】

 ◆川原弘之(かわはら・ひろゆき)

 1991年(平3)8月23日、福岡市生まれ。小3で左投げに転向。中学時代は福岡ウイングスに所属し、3年時にホークスカップ優勝。福岡大大濠では3年時、エースで県大会5回戦。09年ドラフト2位で入団。昨季はウエスタン・リーグで8試合に登板し、1勝1敗。186センチ、95キロ。左投げ左打ち。