<日本ハム3-1オリックス>◇5日◇札幌ドーム
やっと、出た!
日本ハムの4番中田翔内野手(22)が、今季1号本塁打を放った。開幕から5試合連続無安打と不振にあえぎ、3打席凡退で迎えた今季25打席目。8回2死無走者から、初安打を目の覚めるようなライナーで左翼席へ突き刺し、ダメを押した。チームの連敗は3でストップし、勝率も5割に復帰。若き主砲の待望の1発で上昇気流に乗っていく。
中田は、表情を変えずにダイヤモンドを回った。だが、笑顔で出迎えてくれる仲間が目に入ると、もう我慢できなかった。こみ上げるうれしさが、全身を突き抜ける。表情がみるみる緩んだ。
中田
みんな先輩たちが、すごくうれしい受け入れ方をしてくれた。まだ興奮している。感謝の気持ちでいっぱいです。
祝福の中ベンチへ腰を下ろすと、1発を生んでくれたバットに頭をこすりつけて感謝。大型ビジョンにその姿が映し出されると、思わず両手を突き上げた。「自分でも何をしていたか覚えていない」と笑ったが、スタンドはまた、ドッと沸いた。札幌ドームの空間は、まるでワンマンショーのようになった。
中田らしい、鋭いライナーだった。8回2死、オリックス香月の135キロ変化球を、フルスイングで左翼スタンドまではじき返した。打球の行方も見ずに、全力疾走で一塁へ向かう。歓声の大きさで、オーバーフェンスを知った。「全然入ると思わなかった。最高の形になってよかった」。開幕から6試合目、実に25打席目の初安打だった。
「長かった」と漏らす。オープン戦で打率3割6分8厘と安打を量産しながら、開幕と同時にピタリと止まった。用具担当者に倉庫から引っ張り出してもらってバットを変えるなど、気分転換をはかってきたが、Hランプはつかないまま1週間がたとうとしていた。トンネルに迷い込んだ24打席のうち、半分の12度が走者がいる場面。「チャンスをつぶすことが多かったから悔しかった。どうしたらいいかわからなかった」。4番としての責任もあった。精神的に、追い込まれていた。
救われたのはチームメートとファンの声だ。稲葉には「おまえはおまえなんだから堂々としていればいい。4番奪っちゃうぞ」と冗談交じりにゲキを飛ばされた。さらに左翼の守備位置に向かうと、自分の応援ボードが視界に入る。この日のお立ち台では「中田翔って書いてある、あの、か、看板…な、なんですか?
アレを見る度に、切り替えていました」。感謝の思いを飾らない言葉で伝え、また喝采を浴びた。
精神力で乗り越えられたのは、2年前の苦しい経験も生きている。シーズン中に左膝半月板を手術。野球ができない時期を味わった。「自分はやっぱり野球が死ぬほど好きなんだなと再確認した」。病室のベッドでは、昼夜を問わず常にボールを握っていたという。野球ができない苦しみから考えれば、今の悩みなんてちっぽけに思えた。
24打席分の、たまった鬱憤(うっぷん)がある。この1発が、逆襲への号砲。「今の自分は上がっていくしかない。吹っ切れたものはあります」。さあ、ようやく、開幕だ。【本間翼】
◆20打席目
中田は昨季もシーズン初安打が難産だった。開幕から7番レフトで出場し続けたが安打は出ず、6試合目の通算20打席目にオリックス木佐貫から中前打。塁上で思わず右腕を突き上げた。



