<ソフトバンク1-5ロッテ>◇15日◇福岡ヤフードーム
ロッテのドラフト1位、藤岡貴裕投手(22)が「攻撃」の内角攻めで、能力を全開にした。ソフトバンク戦で9回を4安打10奪三振で1失点に抑え、12球団の新人一番乗りで完投勝利を挙げた。先輩の助言を胸に、初登板と2戦目で鳴りを潜めた内角への攻撃姿勢を取り戻し、打者の懐を攻めまくった。
藤岡の視線は打者の胸元に向けられていた。4回2死一、二塁。怪力のペーニャをフルカウントに追い込む。田中捕手のサインは外角直球。ルーキー左腕は首を振った。「前の2試合は全然、内角を攻められなかった。相手は外角を意識していたし、攻めようと思った」。主張を押し通した1球。えぐるような内角高めの直球にバットが動かない。今カード初戦で同じ左腕の成瀬から、こん身の外角低め直球を右翼席に放り込んだ助っ人を、見逃し三振に切り捨てた。
プロ初黒星の翌日9日の練習。青空の下、藤岡は西本投手コーチと約15分間、話し合った。説かれたのは「嫌な投手になれ」。藤岡より天賦の才がなかったという同コーチはシュートによる内角攻めで生き抜いた。「10勝で終わる投手ならそれでいい。だが15勝以上を目指すには、打者の嫌がることをしないと」というのが真意だった。
藤岡の他球団評は「コントロールがいい」「完成品」。だが「嫌な」という言葉はなかなか聞かれなかった。藤岡も大学時代は攻めていた。オープン戦も右打者への「クロスファイア」など内角攻めへの手応えはあった。だが公式戦に入れば、捕手もオープン戦で相手に抱かせた印象を逆手に取った配球をする。プロの世界では、まだ遠慮もあるし、先輩捕手のサインに簡単には首を振りづらい。もともと穏やかな性格。この2戦に限れば、知らず知らず内角への頻度が落ちていた。
過去の登板を顧みて、心に決めた。「当てるぐらい内角を攻めないと。外ばかりだと打者も踏み込んでくる」。そしてプロ3戦目のマウンドに向かった。
初完投目前の9回。江川を内角高めで空振り三振、松田を外角高めのボール球で振らせて10奪三振目で試合を締めた。「攻撃」の意思を持った荒ぶる球。強力打線の日本一チームをねじ伏せた内角攻めは、藤岡の成長を象徴していた。【広重竜太郎】




