<日本ハム4-3楽天>◇15日◇札幌ドーム

 不振にあえいでいた4番が、劇的な1発で試合を決めた。日本ハム中田翔内野手(22)が、楽天戦の同点の9回に、左翼へ自身初のサヨナラ本塁打を放った。快音がストップし、16打席無安打。この打席まで打率1割を切る低迷ぶりも、トンネルの先に最高の結果が待っていた。9回表に同点とされるイヤな展開を4番の1発が吹き飛ばし、チームは連勝した。

 白かった中田のユニホームは土だらけになり、背中がめくれて肌が露出した。蹴られ、たたかれ、くすぐられた。そのひとつひとつが、最高に快感だった。

 中田

 いやぁ…、良かった。うれしい。何にも変えられないうれしさです。

 9回表に相手の4番ガルシアの2ランで同点に追い付かれた。その直後の9回裏。先頭で打席に入ると、フルカウントからの6球目、内角の137キロ直球をライナーで左翼スタンドに運んだ。87本塁打を放った高校時代にもなかった、野球人生初のサヨナラ弾。悩める主砲に笑顔が戻った。

 中田

 サヨナラだと思わなかったので。みんなが(ホーム)ベースにいたから、あぁサヨナラだと。打つことに精いっぱいだった。

 点差、場面は頭から吹き飛んでいた。それだけ、必死だった。

 開幕から25打席目に初安打となる1発を放ったが、そこから再びトンネルに入っていた。この日の1発も17打席ぶりの安打。「使ってもらっているのに、勝利に貢献できていない。4番として腹が立っていた。申し訳ない気持ちでいっぱいだった」。打率3割6分8厘と好調だったオープン戦のVTRを繰り返し見た。「あのときの自分は何を考えていたか分からない」。分からないのではなく、何も考えていなかったのだと気がついた。最近は、悩みすぎていた。

 福良ヘッドコーチとは二人三脚で修正に取り組んできた。また、前日14日には札幌ドームを訪れていた元中日の立浪和義氏から「上半身に力が入りすぎでは?」と指摘を受けた。下半身はがに股でどっしりと構え、グリップ付近は脱力を。マイナーチェンジを施した新打法が、さっそく実を結んだ。「まだ最後の最後に1本出ただけなので(手応えは)分からないけど、バットが出しやすい位置ということを考えてやっている。こういう形で(結果が)出て良かった」。スランプ脱出に、光が射した。

 お立ち台では、今季初アーチを放ったときと同じ質問が飛んだ。「もう大丈夫ですね?」。中田は一瞬、考え「…。何も言わんときます」と言葉をグッとのみ込んだ。「はい!」と高らかに宣言して、再び苦しんだ日々が脳裏をよぎった。言葉ではなくバットで、ファンを安心させればいい。【本間翼】