<巨人2-0阪神>◇29日◇東京ドーム

 阪神金本知憲外野手(44)のバットから快音が鳴り続けている。3年ぶりに3試合連続のマルチ安打。通算安打を2468本に伸ばし、歴代8位長嶋茂雄にあと3と迫った。気温の上昇とともに44歳は今、絶好調モードに突入。連敗ストップへ、G倒へ、アニキのバットに続け!

 金本が打席に立てば、チャンスが生まれた。勝利への活路を切り開き続けた4打席。得点にこそ結びつかなかったが、2日続けて5番を任された鉄人が、今、打線の中心がだれであるのかをはっきりと証明した。それほど充実していた。

 「カネの状態は上がってきている」

 前日の和田監督の言葉は正しかった。相手は巨人のエース内海。第1打席、内角球を右前にはじき返した。第2打席、今度は少し真ん中よりの球を中前へ運んだ。いずれも先頭打者としてチャンスをつくった。この時点で瞬間的に打率は3割となり、10年の開幕戦以来2年ぶりに3割を超えた。右肩蕀上(きょくじょう)筋断裂という選手生命さえ危うくした大ケガから金本が復活途上にある証しだった。

 ここ4試合は連続安打。しかも3年ぶりとなる3試合連続の複数安打をマークした。ここ最近の3カードで打率はジャスト5割。安打を量産し、通算でも2468安打とし、ミスタープロ野球・長嶋茂雄氏(76=巨人軍終身名誉監督)の記録にあと3本と迫った。ただ、ヒットや打率という、目に見える数字よりも、現在の金本の状態を示す1打席があった。6回、1死一、三塁の場面で内海から選んだ四球だ。片岡打撃コーチが言った。

 「あの四球が状態が上がっているということではないかな。体が止まっている証拠でしょう」

 カウント2-2から相手バッテリーは外角へのフォークで誘ってきた。だが、金本はこれを平然と見送った。フルカウントからも同じ球が来たが、微動だにせず。完全に相手を威圧して一塁へと歩いた。満塁とチャンスを拡大した。

 体だけではない。気迫もほとばしっていた。次打者城島の打球が遊撃へのゴロになると、猛然と二塁へスライディングした。結果的には併殺となったが、ユニホームの膝から下を真っ黒にした金本の姿から、勝利への執念がにじんでいた。今日こそ、勝利をたぐり寄せる。負けられない敵地での第3戦へ-。その背中が頼もしかった。【鈴木忠平】

 ▼金本の3試合連続マルチ安打は、09年4月16日中日戦~18日横浜戦以来3年ぶり。昨季4割6分7厘と打ち込んだ内海との相性の良さも健在だった。第2打席の安打で今季通算70打数21安打となり、打率3割ジャストに(第4打席で凡退し2割9分6厘に後退)。金本の打率3割台は、10年の開幕戦3月26日横浜戦で3打数1安打した3割3分3厘以来。2試合以上を消化した時点に限れば、09年5月31日日本ハム戦終了時の3割ちょうど以来だった。