<日本ハム5-1巨人>14日◇札幌ドーム

 防御率で12球団トップを走る実力はホンモノだった。日本ハム吉川光夫投手(24)は7回3安打1失点。「状態がいい巨人打線相手に、どれだけ長いイニングを投げられるかだと思っていた」。ハーラートップに並ぶ7勝目を挙げて巨人の交流戦優勝を阻み、笑みを浮かべた。

 前回5日の広島戦では、3回に危険球退場。恐怖心を消してくれたのは「もう1度、当てるかもしれないけど、それでも自分のボールを投げよう」という栗山監督の言葉だった。1回に先制点を許したが、2回以降は三塁を踏ませない。球速150キロの直球に、スライダーを有効に使った。

 同学年の斎藤とは対照的に“持ってない”。広陵(広島)では全国の舞台を踏めなかった。昨年は、プロ野球記録更新が懸かったチームの連続イニング無失点を止めた。好投する時に限ってなぜか援護に恵まれない。普段は電車を利用するが、珍しくマイカーで現れた5月10日のロッテ戦(QVC)ではゲリラ豪雨という悪天候で、関係者駐車場に止めた車が水没した。何かと不運な印象だったが、アンラッキーをはね返す実力が備わってきた。

 推定年俸は1100万円。過去3年間は勝てず、知名度では同学年の斎藤や巨人沢村に及ばないが、今や防御率、勝利数で2冠と数字に裏打ちされた力がある。「これからは、完投しながら勝っていけたら」。1年目の07年以降、遠ざかる完投能力を身に付けた時、リーグを代表する左腕になるはずだ。【中島宙恵】

 ◆吉川の危険球退場

 5日広島戦(札幌ドーム)の3回1死から、東出への初球147キロの直球がヘルメットの右耳付近に直撃。そこまで3与四球ながら無安打3奪三振の好投だったが、11人目の打者で危険球退場となった。50球で降板。東出への謝罪とともに「試合をぶち壊して申し訳ないです」と話した。