<阪神3-4広島>◇3日◇松山

 ミラクルだ!

 0・5ゲーム差だ!

 虎のしっぽが手に届くところまで来た!

 広島は3日、9回2死走者なしから逆転勝ちした。2連打の後、ルーキー菊池涼介内野手(22)が代打で左前適時打を放って1点差。なおも2死二、三塁とし、梵が三振してゲームセットと思いきや、暴投で振り逃げ。その間に2者が生還して逆転勝ちした。阪神に0・5差。さあ、今日4日も勝って4位浮上だ。

 虎のしっぽが手に届く。2-3と1点差に迫った、9回2死二、三塁。梵は2ボール2ストライクと追い込まれ、最後は榎田のスライダーにバットが空を切った。試合終了-。そのときだ。捕手小宮山がボールをはじくと、一塁側ベンチへコロコロと転がっていく。

 三塁走者の天谷が生還すると、俊足ルーキーの菊池も猛然と、二塁から本塁目がけて走ってきた。榎田が驚く顔を横目に、ヘッドスライディング。“2ラン振り逃げ”で、崖っぷちからの逆転を成功させた。

 菊池

 後ろの距離感は分かりづらいので、一目散に走りました。ベースを越えて、1回止まりかけたんですけど(緒方守備走塁コーチの)ゴーゴーという声が聞こえたので行きました。

 50メートル5秒9の武器が勝利をたぐり寄せた。勝負強さも見せた。直前の2死一、二塁で代打で登場。野村監督の「三振でもいいから振ってこい」という言葉で送り出された。3球目のシンカーを振り切った。1点差に追い上げる左前適時打は、プロ初打点になった。

 野村監督

 菊池はヒットも打ったし、ホームまでかえってきた。魅力あるプレーをして、僕にとってうれしい野球をしてくれた。

 ルーキーが機動力野球を体現したが、指揮官の采配も光った。2球前に伏線があった。2死一、二塁で1ボール2ストライクから重盗を仕掛けた。天谷、菊池の俊足コンビでチャンスを広げた。

 野村監督

 大きいのを打てるのはいないから、ああいうところでリスクを負って走ったから、帰って来られた。こんな試合はなかなかない。

 これまで1勝6敗1分けと苦手にしていた阪神に対し、劇的な逆転勝利。相手に与えるダメージは計り知れない。ついに0・5ゲーム差まで肉薄した。5月3日以来、2カ月ぶりの4位浮上は目前。勢いそのままに、虎を飲み込む。【鎌田真一郎】