<西武1-12楽天>◇7日◇西武ドーム

 待望の1発が出た。楽天岩村明憲内野手(33)が、日本球界に復帰してから初の本塁打を放った。西武先発の牧田対策で左打者9人を並べた打線でプロ初の4番。6点リードの8回、日本ではヤクルトに在籍した06年以来となる1号ソロを右翼席に運んだ。今季開幕を2軍で迎えるなど、楽天入りした昨季から不振が続いたが、今季最多タイの19安打12得点で大勝した一戦で、2安打3打点と復調を印象付けた。

 込み上げる感情を、岩村は胸の内にしまった。8回1死、4番手藤原の内角直球を振り抜いた。久々の感触。目で追いかけた白球はクリムゾンレッドで埋まる右翼席に届いた。大リーグ・パイレーツ時代の10年4月13日以来の本塁打。「本当にうれしい。今までちょっと苦しすぎたので言葉では言えない」。さまざまな思いが駆け巡ったお立ち台で、少し言葉に詰まった。

 楽天に加入した昨季は、不振で苦しんだ。オフには体を絞り今季に懸けた。だが、開幕2週間前の3月14日、右ふくらはぎの肉離れでリタイア。「心の肉離れだったよ」。2、3日は歩くこともできなかった。それでも「1回心が折れたけど、割り切らないとね。前向きに頑張るよ」と耐え忍んだ。全治は4~6週間も、肉離れの早期復帰に役立つ治療器を使い、4月下旬に2軍で実戦復帰した。

 1軍復帰は6月8日。「結果を出さないと上がれないと思ってるから」と1カ月以上、2軍調整が続いた。構える時、重心を下げるフォームに変えるなど、努力を重ねてはい上がった。昇格まで長かったか問われても、「俺が決めることじゃない。やるしかない」。短い言葉に決意を込めた。

 いばらの道は続いた。1軍昇格後、打率は1割を下回った。星野監督も「このままでは終わってしまう」と心配していた。それでも練習でノーステップ打法を取り入れるなど工夫した。「いろいろ試行錯誤して、長い時期だったけど、ひたむきにやってれば結果が出ると思ってやってきた。結果になってよかった」。ようやく光をつかんだ。

 星野監督が西武牧田対策で左打者を並べたため、右のフェルナンデスに代わってプロ初の4番に起用された。2安打3打点で大勝に導き、星野監督も「4番打者じゃなくて、4番目の打者だよ」と言いながら目尻を下げた。ファンから久々の大歓声を浴びた岩村。「最後まで応援してくれて本当にうれしいです。楽天に借りをつくってしまってるので、1つずつ返していきたい」と思いを込めた。座右の銘は「何苦楚魂」。岩村らしい復活劇だった。【斎藤庸裕】

 ▼岩村がパイレーツ時代の10年4月13日ジャイアンツ戦以来の本塁打。日本ではヤクルト時代06年10月10日広島戦以来、6年ぶりの1発。4番でスタメン出場はプロ入り初めて。楽天では球団史上15人目の4番打者だが、15人のうち4番デビューで本塁打は05年トレーシー、10年ルイーズに次いで3人目。なお、楽天がスタメンに左打者(両打ちを含む)を9人並べたのは球団初だった。