<日本ハム5-1ロッテ>◇10日◇札幌ドーム
やっと勝てました!
日本ハムの左腕エース武田勝投手が34歳のバースデー登板となったロッテ戦で、10試合72日ぶりの勝利となる5勝目を挙げた。チーム打率12球団トップの打線を相手に、7回1/3を投げて6安打1失点。4月29日の楽天戦を最後に白星から見放されたが、ついにトンネルを抜け出した。チームは連敗を2でストップし、首位たたきで2位を死守した。
34度目の誕生日を約2カ月ぶりの白星で飾った武田勝は、少し照れくさそうだった。「やっと勝てました」。第一声の後、ヒーローインタビューの最中にもかかわらず、なぜかもじもじ。不思議な魅力で周囲を和ますエンターテイナーは「ここ数カ月(お立ち台から)離れていたので、どう立ち振る舞ったらいいか分からなくて、今、緊張してます」と、2万6000観衆で埋まったスタンドをドッと沸かせた。「忘れられない誕生日。気持ちだけは折れないように、チームが勝てるように頑張ろうと思ってやってきました」。今季初めてバッテリーを組んだ鶴岡、3打点の陽岱鋼からバースデーケーキを食べさせられ、10試合ぶりにつかんだ勝利の喜びに浸った。
この日ばかりは、マウンドでほえた。4回に井口、サブローと連続二塁打を許して1点を先制されたが、その裏の攻撃で味方がすぐに逆転。「ピンチの時ほど変化球に頼っていたところがあった」とこれまでの反省を生かし、恐れず、効果的に直球を投げ込んだ。6回2死二塁では、打席に角中を迎え、カウント3ボールからスライダーとチェンジアップの組み立てで見逃し三振に。マウンド上ではめったに感情を表さない左腕が、思わず拳を握って、叫んだ。
一見、クールそうに見えるが、面白いことが大好きでサービス精神にあふれている。選手が企画を出し合った6月の「選手プロデュースデー」のポスターでは、1人だけおどけたポーズでファンの目を引いた。実はこれ、カメラマンが要求したのではなく「何かやってほしいという周りの雰囲気を感じた」と、レンズを向けられた本人が、とっさに取った行動だった。
選手会副会長となって迎えた今季は、若い投手陣を率先して引っ張っている。そんな意識の変化は、精神力をさらに強くした。昨年、1カ月近く勝てない時期には意味もなく笑いだすなど、奇怪な行動もあったが、今年は2カ月以上白星から遠ざかりながらも冷静そのもの。「自分のことだけ考えていればよかった去年とでは、立場が違う」。芽生えた責任感が、折れそうな心を支えた。今や「来年は(未勝利期間が)3カ月になると予想できます」と冗談を飛ばす余裕すらある。
鶴岡とバッテリーを組んで白星を挙げたのは2年ぶりで「しっかり僕のことを把握して、リードしてくれた」と選手会長を立てた。球宴前の8連戦の初戦で、チームも白星スタート。最強の左のエースが、帰ってきた。【中島宙恵】



