<ヤクルト7-6DeNA>◇11日◇神宮

 三塁を回るころ、厳しく引き締めていた表情を、ようやく緩めて笑った。2点差に迫った直後の8回2死満塁、ヤクルトの4番畠山和洋内野手(29)が狙いにいった内角高めのシュートを振り抜く。「思い切り、ボールでもインコースに来たら何でもいくつもりだった」と集中した。左翼ポール際に伸びた打球が、切れずに飛び込む。22試合ぶりの1発は、値千金の5号逆転満塁弾だ。

 打席に入るまではスライダー狙いだった。初球、外角へのスライダーを見て狙い球を切り替えた。DeNA加賀の、右横手から曲がる切れ。「右バッターには難しい」。直感で判断した直後、待っていたボールがやってきた。

 試合開始のおよそ3時間前、地元岩手で開催されるオールスター第3戦のホームラン競争に、ファン投票で選出されたと聞いた。第一声は「こんな成績なのに…」だった。試合前まで打率2割5分5厘、4本塁打、26打点。目指してきた数字からは程遠かった。

 それでもファンは、こんな1発を見たかった。岩手県営球場は、専大北上高時代、本塁打を積み重ねた原点。「何本とかは覚えてないけどね」。甲子園を逃して泣き、3年夏は出場を決めて泣いた。「野球をやっていて泣いたのは、あの時だけだから」。

 だからこそ、胸を張って凱旋(がいせん)する成績を追い求める。外野の2失策が失点に絡む負け試合を、一振りでひっくり返した。連敗を3で止めた。「まだ胸を張っていける成績じゃない。残り7試合、最高の状態でオールスターを迎えたい」。最後は神宮に集まったファンに、お立ち台から誓った。【前田祐輔】