<楽天5-1日本ハム>◇13日◇Kスタ宮城

 力強く戻ってきた。楽天田中将大投手(23)が、今季自己最多13三振を奪い8回無失点で6勝目を挙げた。前回6日の西武戦では、右脇腹付近の炎症で予告先発を緊急回避したが、不安を感じさせなかった。斎藤との今季2度目の投げ合いを制し、2位日本ハムとは0・5ゲーム差に迫った。これで同い年の投手との先発での投げ合いは通算8試合7勝負けなし。改めて88年世代NO・1の力も見せつけた。

 明らかに、田中のスイッチが切り替わった。5-0と十分すぎるリードをもらい迎えた8回。日本ハム先頭田中、小谷野と連打を食らった。「点を取られて降板は後味が悪い」。目を見開き、口元を引き締める。無死一、二塁。糸井を2球で追い込み、この日14個目の「三振を狙った」スプリットを外角低めへ。ストライクゾーンに入り空振りは取れなかったが「イメージはあった」遊ゴロ併殺。最後は中田を内角高めで料理した。初球147キロでバットをへし折り三飛。ワッとほえ、マウンドを去った。

 球場の熱気とは対照的に、田中の心中は“つぐない”だった。前回6日の西武戦。当日昼すぎに右脇腹付近の痛みが強まり、予告先発を回避した。お立ち台で「ファンの方々にも心配をかけ、チームには多大な迷惑をかけました」と謝った。積み重ねた貢献度と比べれば、とは考えない。「申し訳ない」と繰り返した。

 あけた穴を埋めるには、行動しかなかった。回避が決まると、西武ドームを離れ仙台へ急いだ。終電間近の新幹線に飛び乗り、翌日すぐに病院へ。「軽い炎症」の診断で、前半戦中の復帰が視野に入った。当然、不安はあった。8日の2軍練習場。ブルペンに向かった。最初はそろり。徐々に力を入れられた。やっと「安心した」が、表情は晴れない。「予告を外れるなんて、よっぽどのことなんです」。自分に言い聞かせた。だから「あの日(6日)チームが勝ってくれたことが一番」と続けた。

 故障が続く。今回は大事に至らなかったが、苦しみと隣り合わせの6勝目となった。だが、ファンに楽しみも提供した。前日の先発が雨で流れ、スライド登板で斎藤とのマッチアップが実現。当日券売り場に列ができた。今季2度目、通算3度目も制し、同世代トップを改めて印象づけた。謝罪のお立ち台でも、最後は「(斎藤に勝ち)2度あることは3度あるということで」と笑わせた。

 不満は残る。8回110球。前回の回避がなければ続投だったはず。星野監督は「あいつは完封はいつでもできるから。8回まで0は認めてやらな」と目を細めたが、田中本人は「最後まで投げたかった」。ただ、故障がありながらリーグトップの防御率1・63。日本ハム、ロッテと続く上位との6連戦初戦を奪い「後の投手が良い形で、つないでくれると思います」と託した。チームは、あと1勝で球団初の勝率5割以上での前半戦ターンが決まる。お膳立てをして、エースが前半戦の登板を終えた。【古川真弥】