<ソフトバンク1-3日本ハム>◇1日◇福岡ヤフードーム

 同点の9回表1死一塁。打席に向かう日本ハム小谷野栄一内野手(31)は、スコアボードの時計に目をやった。試合開始から3時間20分が経過。9回が最終回となることが濃厚だった。「つなぐのが僕の役割。最低でも走者を進めようと思いました」。ミートを心掛け、ソフトバンク森福の内角直球をコンパクトに振り抜いた打球は、チームを救う決勝2ランになった。

 2、5、6、7、8番。今季スタメン起用された打順だ。一方で、状況に応じた打撃で献身的にプレーするうち、自分のバッティングを見失う時期もあった。栗山監督は「ずっと苦労かけてきた。むちゃくちゃしてきた」。高校(創価)の後輩でもあり、無理を強いてきた。打率はリーグで下から2番目の2割2分2厘。「(本塁打決着は)想像もしていなかった。いいところで打ってくれた。よかった」。心底、喜んだ。

 腰の痛みを抱える小谷野は、今でも痛み止めがなければプレーできない状態が続いている。左ひざは試合後にアイシングが欠かせないし、6月の楽天戦で送球が直撃して救急車で運ばれた右頭部の傷付近は、髪の毛が生えてこない。まさに満身創痍(そうい)だ。それでも「当たり前のことを当たり前のようにやっているだけ」と小谷野は弱音を吐かない。

 「強い相手に勝てたというのは、チームにとっても大きい。今日はたまたま僕。みんなで勝ち取れてよかった」と言った。ケガで離脱した糸井、田中の穴は、全員が精いっぱいの力でカバーする。小谷野の一振りは、みんなの思いを体現していた。【本間翼】