<阪神3-1広島>◇2日◇甲子園
やっぱり、甲子園がよく似合う。阪神ドラフト2位歳内宏明投手(19)が待ちに待ったデビューを果たした。本拠地のマウンドで初先発し、5回1失点。球界を代表する投手、広島前田健と互角に投げ合った。ピンチにも動じない度胸、強気の投球。期待のルーキー右腕が希望の灯をともした。
いきなりのピンチにも動じない。1回1死満塁。あどけなさの残る顔に汗が光る。だが、ここからが強心臓ルーキーの真骨頂だ。丸を三邪飛、堂林を遊ゴロに仕留め、緊張の立ち上がりを無失点で切り抜けた。
歳内
初回は緊張したけど、2回からリラックスして投げられた。あんまりランナーがいると考えないで、1球1球に集中して投げることを考えていた。
2回2死三塁から東出の投手強襲内野安打で先制点を献上。「もっと早い打球かなと思ったけど、意外に遅くてイレギュラーしたので」と苦笑いした。それでも大崩れしない。スプリットと緩いカーブを武器に5回4安打1失点。初星はお預けとなったが、希望が膨らむデビュー戦だった。
タテジマを身にまとい、甲子園で好投する姿を見せたかった人がいる。母方の祖父・小川美水(みすい)さん(79)だ。美水さんは3月に左膝を手術。出かけるときは、つえが手放せない。「孫がね、『じいちゃん、膝が悪いんだったら電動自転車を買ってあげるね』って言ってくれたんだ」。手術跡をさすりながら祖父は言う。「これで、また野球見に来てな」。心優しい孫は、十数万円の電動自転車をプレゼントした。
尼崎市内の美水さんの自宅から鳴尾浜まで自転車で20分。歳内は「最近までリハビリしてたみたいで。20分もかかるってことは、相当ゆっくりなんだろうな」と笑うが、美水さんは「軽くて乗りやすいんやな」と頬を緩める。8月上旬、愛車を走らせて駆けつけた鳴尾浜のスタンドで、孫を誇らしげに見つめていた。「阪神でやってくれると思わなかったな」。左膝の状態が芳しくなく、初陣はテレビ観戦となった数十年来の虎党の祖父へ。奮闘が何よりの励みになったはずだ。
歳内
もっと投げたかったけど、チームが勝てたので良かったです。
ヒーローは新井良に譲っても、勝利の立役者は期待のルーキー右腕だ。高卒新人で初登板初勝利という球団初の快挙こそ逃したが、未来を担う若虎が聖地のマウンドにその1歩を力強く刻んだ。【岡本亜貴子】
◆歳内宏明(さいうち・ひろあき)1993年(平5)7月19日、兵庫・尼崎市生まれ。聖光学院(福島)で2年夏に甲子園8強。3年夏は2回戦敗退も2試合で30奪三振。11年ドラフト2位で阪神入団。ウエスタン・リーグ9試合で4勝2敗、防御率2.32。183センチ、89キロ。右投げ右打ち。



