<ヤクルト4-4巨人>◇9日◇ハードオフ新潟

 巨人ベンチが、チェスのような理詰めの選手起用を展開した。3点を追う6回、先頭で打席が回った宮国椋丞投手(20)に代打谷を投入したのが引き金。2死満塁から同じく代打の高橋由が3点適時二塁打を放ち、追いついた。その裏の守備で、遊撃坂本を除くポジションで顔ぶれが変わった。最後まで目まぐるしく入れ替わって延べ16人の野手が出場し、ベンチ入り野手で出場なしは捕手の実松だけだった。分厚い布陣を自由自在に使いこなしてマジックは12。「ツープラトン」でゴールまで駆け抜ける。

 ゲームの行方をフラットに戻した原辰徳監督(54)が、試合そのものも仕切り直した。6回、代打で同点の3点適時二塁打を放った高橋由が、左翼の守備に入った。ここを起点に、選手の持ち場がぐるりと変わった。一塁を守っていた阿部がマスクをかぶって現れた。大田はグラブをファーストミットに持ち替えている。スタメンと同じ場所に入った選手は、遊撃坂本だけ。「別のチーム」が出来上がった。

 「ビハインドだったから」と、6回に代打攻勢を仕掛けた原監督。相手の継投を冷静に見極め、村田の代打に高橋由という手にも「チームで戦っている、というところ」と淡々としていた。策が的中し、守備に転じてもスタメンとの力量は変わらない。ベンチ入り野手を目まぐるしく入れ替え、引き分けに成功した。

 セ・リーグはDH制がない。戦況を読みつつ、限られた時間の中で選手を投入する力量が監督に問われる。ゲーム中での臨機応変な布陣変更は、原監督が得意とする戦術だ。「9番には投手」の固定観念を取り払うことはもちろん、柔軟な思考で、大胆なポジション変更もためらわず行う。

 もちろん、起用に応えるだけの実力が選手になければ、無謀な策となってしまう。岡崎ヘッドは「今年は場面、場面で変えていくのがウチだからね。チームとしての役割分担、というよりも、個々が役割を理解している」と、補足説明した。ベテランも例外なく、各自がこなせるポジションを、キャンプから地道に練習してきた。気が付けば、多くの選手に複数の守備位置を任せるだけの力が備わっていた。原監督をして「捨て駒がいない」とする分厚い戦力が出来上がった。

 ヤクルト戦3連勝は逃した。でも原監督は「よく引き分けたと思う。3-0からですからね」。自在なゲームプランを可能とさせる、頼もしい選手たちについては「自分が言うと、手前みそになるから…。どうぞ」と両手を差し出し、受け手の印象に委ねた。【宮下敬至】