<日本ハム4-2オリックス>◇19日◇札幌ドーム

 日本ハムの守護神・武田久投手(33)が、球界史上6人目の快記録を達成し、優勝マジックへの勢いを加速させた。19日オリックス戦の9回にマウンドへ上がり、3人で抑えてリーグトップを更新する28セーブ目をマーク。過去5人しかいなかった7年連続50試合登板の節目を、危なげなく10球で飾った。チームは3連勝。早ければ22日に優勝マジックが点灯する。

 万雷の拍手と歓声を背にマウンドへ立った武田久は、頼もしかった。9回。直球主体で内角をどんどん攻め、あっさりと3者凡退に仕留める。「調子は悪くないんじゃないですか?

 シンプルに投げられているので」と事もなげに言った。

 今季は開幕前から、古傷である右膝の痛みと闘ってきた。5月2日には2軍落ち。「今年はもうダメだろうと思った。ダメなら、自分から1軍で投げるのは無理だと言うつもりでした」。状態が悪いまま1軍へ戻っても、守護神で起用するなど首脳陣に気を使わせてしまう。それではチームのためにはならない。1つの取りこぼしが後々響くことを、経験豊富な右腕は知っていた。

 同30日に1軍へ昇格してからも右膝の痛みは取れず、苦しい試合が続いた。そんなとき、支えになったのが札幌ドームのロッカーに飾られた「背番号21」のTシャツだった。“ある人”へ贈ったプレゼントが、自分の手元へ遺品となって戻ってきたのだ。今年1月、交流のあったオートレーサーの坂井宏朱さん(享年27)が練習中に事故死した。もともとオートレース好きで親しいレーサーも多かったが、44年ぶりの女性レーサーとして昨年デビューしたばかりの坂井さんを、妹のようにかわいがっていた。年末の食事会で顔を合わせてから、1カ月もたたない間に起きたショッキングな出来事に「若かったのに…」と絶句。夢半ばで命を散らした坂井さんが残したTシャツは今、大きな励みとなっている。

 積み上げたセーブ数は28に達し、2年連続3度目となる最多セーブのタイトルも見えてきた。8月25日楽天戦(Kスタ宮城)で敗戦投手になって以降は、11試合連続で無失点とVロードを突き進むチームの屋台骨となっている。シーズン50試合以上の登板を7年以上続けた投手は、現役では中日岩瀬と武田久の2人。「(50試合は)これは最低限。これくらいは、やらないと」と、さらなる高みを目指す。背番号21がセーブ王のタイトルを手にするとき、3季ぶりリーグ制覇の夢もかなうはずだ。【中島宙恵】