日本ハムのクライマックスシリーズ(CS)の「切り札」は、経験豊富なベテラン捕手だ。栗山英樹監督(51)が17日から始まるCSファイナルステージで、中嶋聡兼任バッテリーコーチ(43)の登録を検討していることが10日、分かった。初戦、2戦目に敗れて劣勢になった場合というのが条件で、状況打開を百戦錬磨の26年目ベテランに託そうという考え。「奥の手」と期待している。

 日本ハムには、他球団にはない「武器」がある。的確な状況判断とリード。中嶋兼任コーチが、CSの切り札になる。リーグ制覇が決まった直後、栗山監督は「最後の奥の手はそれ。プレーオフにいけば、そういうことも出てくる。昔、三原さんもやったんだよね。確かに最後はそれしかなくなるだろうな」と話していたが、その起用が現実味を帯びてきた。

 17日の初戦はシーズン同様、鶴岡、大野でスタートを切る。だが、連敗などで状況が悪くなったときには中嶋兼任コーチを登録し、マスクをかぶらせる考えだという。プロ26年目の今季は3試合の出場にとどまったが、“グラウンド上の監督”になれる冷静さと存在感は際立つ。オリックス、西武、日本ハムと3球団で日本シリーズに出場している同兼任コーチの実績と経験は、チームが窮地になったときこそ生きてくる。

 栗山監督の頭にあるのは、師と仰ぐ故三原脩氏の思い切った選手起用法だ。西鉄が3連敗から4連勝して日本一になった58年の日本シリーズ。西鉄三原監督は4戦目の途中に、捕手を同シリーズで出番のなかったベテランの日比野に代え、これが的中。その試合に逆転勝ちすると、そのまま4連勝で頂点に立った。たった1人の選手交代で、シリーズ自体の流れがガラッと変わった。中嶋兼任コーチにも、その役割を期待してる。

 今日11日からは、宮崎で行われているフェニックスリーグに主力組が参戦し、最終調整に入る。栗山監督も自ら指揮を執り、決戦モードへと切り替える。「(選手には)宮崎でスイッチを入れてくれと言った。札幌に帰る…、という気持ちではなく札幌に乗り込むというイメージで。開幕戦のときの空気に持っていきたい」。大一番へ向けて、調整も準備も、着々と進んでいる。