<パCSファイナルステージ:日本ハム4-2ソフトバンク>◇第3戦◇19日◇札幌ドーム

 3連勝の陰にベテランの心遣いがあった。第1戦が終わった夜、日本ハム稲葉篤紀外野手(40)はチームメートに頭を下げて謝ったという。「バントを失敗して申し訳なかった」。試合には勝ったが、5回に初めての走者を出した場面で、仕事ができなかった。そのプレーを反省してのことだった。「ああいうことに先輩も後輩もない。そんな大げさなことではないけど、雰囲気を悪くしたくなかったから」と謝罪した理由を説明した。

 稲葉の雰囲気づくりはこのことだけにとどまらない。CSファイナルステージの開幕前夜には、栗山監督に話しかけた。「明日、ミーティングやりますか?」。やるという返事を聞くと「ぜひお願いします」と申し入れた。緊張感を持って試合に入るために必要だと思っていた。監督がやる予定はないと言ったらお願いするつもりだった。背中を押された栗山監督も、おかげで選手に声をかけやすかったと感謝した。

 日本ハムの島田利正球団代表は、チームの成功の要因に2人の選手の加入が大きかったと言う。「1人は新庄、もう1人は稲葉。2人ともチームを変えてくれた」。ファンを魅了することの大切さを教えてくれた新庄と、野球に対する真摯(しんし)な取り組み方を教えてくれた稲葉。この2人の存在が、今の日本ハムの礎となっている。

 ソフトバンクとの実力の差はほとんどなかっただろう。あとはいかにいい精神状態でプレーし、本来の能力を発揮できるかだった。この日もバントを決められなかったのは愛嬌(あいきょう)だが、稲葉が心を尽くした雰囲気づくり。その成果は、結果を見れば明らかだった。【竹内智信】