<コナミ日本シリーズ2012:日本ハム1-0巨人>◇第4戦◇10月31日◇札幌ドーム

 歴史に残る好勝負だ。栗山日本ハムがサヨナラ勝ちで巨人に連勝し、対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。0-0の延長12回1死一、二塁、途中出場した15年目の伏兵・飯山裕志内野手(33)が左越え二塁打を放ち、4時間15分の熱戦にケリをつけた。栗山英樹監督(51)はお立ち台で「感動しました」と声を大にした。ベンチ入り野手16人中、15人をつぎ込む総力戦を制し、今日1日の第5戦で日本一へ王手をかける。

 手荒い祝福でもみくちゃにされたヒーローを、栗山監督は優しい笑顔で出迎えた。延長12回の激闘に決着をつけたのは、プロ15年目、途中出場の飯山の一振り。1死一、二塁、西村から左中間を破る適時二塁打を放つ。栗山監督は「感動しました。最高の勝ち方。今年のファイターズを象徴するような試合。(飯山)裕志は本当に苦労してきた。最後までグラウンドに残ってノックを受けて、バットを振ってきた。どれだけ練習してきたかがわかるヒットだった」と、苦労人をたたえた。

 プレーボールからゲームセットまで、ファイティングポーズをとり続けた。まずは試合が均衡していた8回だ。球数77球、無失点投球を続けていた中村から石井にスイッチした。両チーム無得点が続いていただけに、投手交代が流れを変えそうな局面。だが「攻め続けるしかない。1点を取られる前に手を打てるかどうかだから。引っ張りすぎて点を取られるというのは、シーズン中はいいけど、シリーズでは許されない」。信念を持って、迷いなく積極的にタクトを振るった。

 9回には連打で2死一、三塁のサヨナラの好機をつくると、ベンチに残る二岡、杉谷を惜しみなく代打で投入。時間制限のない日本シリーズ。最大15回を戦うことになるが、この時点ですでに、野手は新人捕手の近藤1人。「巨人を相手に9回で点を取れなかったら負けなんだという気持ちでいった。15回を考えて、10回に点を取られたら意味がない」と覚悟を決めていた。その一瞬一瞬を全力で戦うのが「栗山流」。ミラールームで準備をする選手がいないため、ベンチは役目を終えた選手たちでごった返し「座るところがない」(飯山)状態だったが、全員が声を出すことで、チームは一丸となった。

 その飯山の決勝打も、栗山監督の攻めの姿勢から生まれた。1死一、二塁で次打者は陽岱鋼。飯山自身も「バントを考えた」が、送られたサインは、「打て」。「自分で勝負してくれるんだ、と思った」と、伏兵飯山の闘争心に火が付いた。就任後、全選手と面談した栗山監督が伝えたのは「みんな、やれる力は持っている。オレは信じている」という思い。「全員を1億円プレーヤーに」。すべての選手を愛し、信じる心。ひそかに立てた目標は、今でも変わることがない。

 混パを制した日本ハムらしい総力戦で、2勝2敗のタイに戻した。栗山監督は「第6戦までいける権利を得た。ファイターズの選手たちは、本当にすごいです」とうなずいた。形勢は逆転した。あと2勝。攻めて、攻めて、攻め続ける。【本間翼】

 ◆飯山裕志(いいやま・ゆうじ)1979年(昭54)7月13日生まれ、鹿児島出身。れいめいから97年ドラフト4位で入団。ユーティリティープレーヤーとしてチームを支え、プロ15年間で公式戦通算650試合に出場。635打数128安打、打率2割2厘、1本塁打、36打点。今季年俸は推定2800万円。178センチ、76キロ、右投げ右打ち。