<コナミ日本シリーズ2012:日本ハム2-10巨人>◇第5戦◇1日◇札幌ドーム

 日本ハムが栗山英樹監督(51)の猛抗議も実らず、3敗目を喫して窮地に追い込まれた。4回無死一塁で、2番手の多田野が、巨人加藤への初球がヘルメットに当たったと判断され、日本シリーズ初の危険球退場処分になった。栗山監督は球審に対して執拗(しつよう)に食い下がったが、判定は変わらず、直後に決定的な6点目を献上。後味の悪い敗戦となった。

 柳田球審に詰め寄る栗山監督の顔は紅潮し、身ぶり手ぶりは激しさを増した。「こっちは間違ったことは言ってない。判定ではなくて(球審が)言っていたことが間違ってるってこと。それは納得するところまでやらないと、選手のためにもならない。オレは『退場にしろよ!』とも言ったよ」。冷静になった試合後も言葉は鋭かった。

 4回、多田野が巨人加藤へ投じた初球だ。139キロの速球が、バントの構えをした打者の頭部付近を通過した。ボールはバックネット方向に転がり、加藤はもんどり打ってうずくまった。柳田球審は「ヘルメットに当たったと判断しました」。死球と判定し、多田野に危険球退場を告げた。

 猛然とベンチを飛び出した栗山監督の抗議は約4分間。「バントにいっているよね?

 バントにいけば、(体に当たって)空振りしてもストライク」。死球かバントか…。見解の違いで始まったが、判定が覆らないことはもちろん分かっていた。「判定のことは(間違いも)ある。スローで見るのはズルだし、試合中は見られないんだから。(審判は)一生懸命やっている」。だが、お互いに口調が激しくなる中で納得出来ない「言葉」があり、エキサイトしたという。

 その後も乱調が続く投手陣は、15安打を浴び、10失点で完敗。後味の悪い一戦となったが、栗山監督の胸を熱くする“異変”が球場を覆った。5回に回ってきた加藤の打席。札幌ドームのスタンドからブーイングが飛んだ。「本当に一緒に戦ってくれているんだなと思った。選手も感じてくれたと思う。そういう思いがあったのに、こういう試合にしてしまった。勝つことができなかった。それが申し訳ない」。判定に対する悔しさではなく、ファンの思いに、応えられなかったことが悔しかった。

 巨人には王手をかけられ、明日3日から敵地東京ドームに戻る。それでも栗山監督は逆転での日本一を信じる。「感謝という意味で、今日は一生忘れない。ここで監督をやらせてもらってよかった。この思いをあさってにつなげたい。絶対に諦めない。2つ勝って、いい報告ができるように頑張る」。最後まで攻めて、攻めて、攻め続ける。【本間翼】

 ◆危険球メモ

 両リーグのアグリーメント(申し合わせ事項)で危険球による投手の退場ついて「投手の投球が打者の顔面、頭部、ヘルメット等に直接当たり、審判員がその投球を危険球と判断したとき、その投手は即退場となる」とされている。また、野球規則8・02では投手の禁止事項の1つとして「打者を狙って投球すること」があり、この場合は当たったかどうかにかかわらず審判員の判断により投手(または投手と監督)を退場させることができる。