さらば虎党よ、甲子園よ…。阪神から海外FA宣言してメジャー挑戦する藤川球児投手(32)が23日、甲子園で行われたファン感謝デーに参加し、惜別のマウンドに立った。紅白戦にサプライズ登板。かつて女房役だった元阪神・矢野燿大氏(43=野球評論家)とバッテリーを組み、今季限りで引退した金本知憲氏(44)らと対決。けじめの“儀式”で別れを告げた。

 ついに別れの時がやってきた。ファン感謝デーのフィナーレ。ナインとともに場内1周する藤川は穏やかな笑みを浮かべていた。阪神ファンへ一礼し、手を振る。ありがとう。そして、さようなら…。雨の甲子園は惜別ムードに包まれた。

 阪神の黄金期を支えたリリーフエースは、粋な演出で送り出された。軟式ボールで行われた紅白戦の最終回。藤川はおもむろにマウンドに上がると、脱帽してぐるりと球場全体にあいさつした。先頭鳥谷を空振り三振に仕留め、2死後だ。尊敬する矢野氏が捕手を務め、さらに、金本氏が打席に立った。右翼に特設された“ラッキーゾーン”への本塁打を浴びたが、それも愛嬌(あいきょう)だ。現役を退いた2人と熱く抱擁し、ねぎらわれた。

 藤川

 球団の営業部に感謝です。(2人に)出てきてもらってね。一緒にやってきた先輩だし(元阪神の)下柳さんを含めて、3人には大感謝ですね。シーズンの最後に投げていないから、今の体調は抜群。矢野さんが構えてくれて、他の捕手もいいけど、やっぱり矢野さんがいいですね。

 9月18日、右足内転筋の張りで登録抹消され、そのままシーズンが終わった。これまでファンに別れを告げる機会がないことを、苦慮していた。この日、午前中は黒いビジターユニホームでグラウンドに立ったが、登板に備えて白いタテジマのユニホームに着替えた。自ら見納めのシーンをつくり、ファンへの感謝を込めた振る舞いだった。

 藤川

 甲子園でビジターユニホームを着ることはない。最後かな、と思って。会話はできないから。あいさつはしたかったので。

 紅白戦の最後は直球勝負を貫き、伊藤隼に空を切らせて“セーブ”もついた。甲子園のマウンドに立つ藤川には、誰よりも空振り三振がよく似合う。英子夫人ら家族が三塁側ベンチで見守る前で、有終の美を飾った。ファンに別れを告げ、クラブハウスへと消えた。いざメジャー。感傷に浸る間もなく、前を向いた。【酒井俊作】