巨人阿部慎之助捕手(33)が19日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1億7000万円増の5億7000万円(1年契約)で1発サインした。現役の日本人球界最高年俸で、歴代でも04年、05年の横浜佐々木主浩(6億5000万円)、02年の巨人松井秀喜(6億1000万円)に次ぐ3番目の高額年俸選手になった。(金額は推定)

 慎之助が千両役者ぶりを発揮した。冒頭で契約内容を問われると「6億円には行かず、5億7000万円です」と、自らズバリと金額を明かした。「机に並べたら、どんなことになっちゃうんだろう。すごいなと思います」と、ぶっちゃけトーク全開で会見場は“慎之助劇場”と化した。

 今季は自身初の打撃タイトルとなる首位打者、打点王の2冠に輝いた。文句なしの評価に「なお一層、責任感が増した」と笑みを浮かべた。原監督が「本来なら5番、6番が理想的」と話していたことを伝え聞くと、「捕手の負担を考えてくれての言葉だと思う。そこはありがたく受け止めている」と、話しつつも「でも、やっぱり高いギャラをもらっているので、それぐらいやらないとという責任感はありますね」。主将、捕手、4番の重責を来季も背負う覚悟を固めた。

 会見の終盤になると、カメラマンが用意した撮影グッズをチラチラと見る。「刀があるけど、それを持つんでしょ」と、ニヤリ。でも、それだけでは終わらない。ちょんまげのかぶりモノを懇願されると「おれはお笑い芸人じゃないんだけど…」と、言いながらも、手にとって“サムライ”に変身した。カメラマンの多少強引な要望にも豪快に応える大サービスに、一通りの撮影が終わると拍手まで沸き起こった。

 球界最高年俸を手に入れても持ち前の明るいキャラで重圧をはねのけるのが慎之助流でもある。「メジャーには20億円もらってる人もいる。そこと比べれば自分はまだまだ。そう思って気楽にやりたい」と、笑い飛ばした。来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本代表の主将も務める。名実ともに日本の最高峰に上り詰めた慎之助が、来季は巨人の2連覇&日本代表の3連覇を実現させる。【為田聡史】

 ▼阿部が年俸5億7000万円で契約更改。5億円に到達したのは史上9人目(20度目)で、04、05年佐々木(横浜)の6億5000万円、02年松井(巨人)の6億1000万円に次ぐ高額となった。捕手では05年城島(ソフトバンク、5億円)を抜く歴代最高年俸。また、昇給額1億7000万円は過去最高の07年金本(阪神、2億6000万円)には届かないが、巨人では03年桑田の1億7000万円増(1億4400万円→3億1400万円)に並び球団史上最高になる。