世界一の「あしながおじさん」になる!

 日本ハム稲葉篤紀内野手(40)が23日、社会貢献活動「Aiプロジェクト」の一環で、札幌市内にある「道立子ども総合医療・療育センター」を訪れた。障害や重度の病気と闘う子どもたちに、来年3月の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表入りを宣言。日本の3連覇とチームの日本一を手土産に、来オフも訪問することを約束した。

 子どもたちの笑顔が、稲葉の心を熱くさせた。「去年も会った子たちがいるなぁ」。昨年に続いて2度目の訪問となった同施設。1年前に見た笑顔は忘れていない。この1年の間で退院出来なかった子どももいたが、変わらない元気な表情がうれしかった。「みんな、すごく喜んで大歓迎してくれた。優勝の報告もできた」。ありがとうと何度も声をかけられ、最後は自身も満面の笑みで記念撮影に納まった。

 2つの大目標へ向け、さらに決意は固くなった。1つ目は3連覇への貢献だ。「来季はまずWBCがあります。そこで世界一になることが目標です」。強い意志を、子どもたちに優しく語りかけた。侍ジャパン候補に名を連ねるが、目標はメンバー入りではない。「チーム最年長ですが、レギュラーを取らないと。その気持ちでやりたい」。ベテランとしてグラウンド外の役割も自負するが、定位置争いでも若い選手に打ち勝つつもりだ。

 もう1つは、今年逃した大きな魚だ。「来年、日本一になって、もっと喜んでもらいたい」。あと1歩、手が届かなかった。このオフ、イベントなどで多くのファンとふれ合った。この日も、同施設訪問前に余市町にある「イオン余市店」で約800人とハイタッチした。「ありがとう」「来年は日本一を」など声をかけられた。不惑の侍は、頂点への思いが高まる一方だった。

 「子どもたちには、ただ、ただ頑張ってほしいという願いだけ。僕たちは野球を通じてしか勇気を与えられない。まだまだ、頑張っていかないと」。室内でゴムボールを使った野球をするなど約1時間、一緒に楽しんだ。「いつも逆に、みんなから力をもらっている。自分の活力になる」と、希望と勇気を与え、自身も来季への大きなエネルギーを蓄えた。

 09年に始まった「Aiプロジェクト」も今年で4年目。「これからも、もっともっとふれ合っていきたい」と意気込む。最後に名残惜しい気持ちを押し殺し、語りかけた。「また来ます。今日はありがとう」。次は世界一の「あしながおじさん」となって舞い戻る。【木下大輔】