侍ジャパンの阪神鳥谷敬内野手(31)が、侍魂を虎に注入する。日本代表は19日、米サンフランシスコから帰国。3連覇は逃したが、鳥侍は台湾戦での決死の盗塁など世界一を目指して日の丸を引っ張った。貴重な経験を積み今度は虎のリーダーとしてセ界一に挑む。チームには21日に合流、22日オリックスとのオープン戦(京セラドーム大阪)から復帰する予定だ。

 失意の準決勝敗退から一夜明け、侍ジャパンが帰国した。成田空港でファンに迎えられた選手たちはホテルで解団式を行った。選手、スタッフ、1人、1人が握手を交わした。その中に鳥谷の姿もあった。戦友たちに別れを告げた後、心なしか、すっきりした表情で激闘を振り返った。

 「一番(心に残っているシーン)というのは、やっぱり、台湾戦で井端さんが打って、自分がホームを踏んだシーンですかね。なかなか、こういうメンバーでは、できないし」

 1つのプレーが日本を救い、鳥谷の名をとどろかせた。2次ラウンド初戦、台湾に1点リードされて迎えた9回2死一塁、鳥谷はだれもが驚く盗塁を決めた。劣勢の流れを一変させた。井端のタイムリーで同点ホームを踏み、延長での逆転勝利へとつなげた。相手投手のクイックに関する情報がもたらされていたとはいえ、アウトになれば、ゲームセットという状況で迷いなくスタートを切った。崖っぷちの日本をよみがえらせた勇気ある決断だった。

 準決勝でも1番打者としてスタメン出場し、8回に反撃の三塁打。全員が必死で戦った侍たちの中にあっても、鳥谷の活躍は際立っていた。本人も語ったように初めてのWBCで多くの財産を得た。米国を出発前、しみじみと言った。

 「野球人生でいい経験でもあり、苦い経験でもありました。大きな経験になりました」

 勝利も敗北も財産になった。そして、今度はそれをリーグ制覇のために生かしていく。

 「個人的に開幕に向けて調整して、タイガースとしていい位置にいけるようにしたい。合流して、いろいろなことを若い選手に伝えていけたら」

 和田監督は昨季、投手と野手にそれぞれ1人ずつ置いていたキャプテンを、今季は鳥谷1人にした。絶対的なチームリーダーとして指名し、さらに大きな期待をかけている。そして、世界と戦って、ひとまわり大きくなった鳥谷もまた、その自覚は十分だった。

 「WBCとペナントレースは別物だから」

 シーズンの話になると、そう言って表情を引き締めた。この切り替えこそが、一流の証し。今後は21日にチームに合流し、22日のオリックス戦(京セラドーム大阪)からオープン戦に出場する予定だ。休む間もなく3月29日の開幕は迫ってくる。鳥谷の視線は、早くも次なる戦いへと向けられていた。【鈴木忠平】