<広島11-6中日>◇12日◇マツダスタジアム

 広島が今季初の1試合3本塁打、今季最多の11得点で中日に快勝し、最下位を脱出した。主役は手負いの丸佳浩外野手(24)だった。2点を追う4回2死満塁に代打で登場。5球目だ。朝倉のシュートを捉えた。右中間に飛び込む今季2号は自身初の満塁本塁打だ。左足をぎこちなく引きずりながらダイヤモンドを1周した。

 「ポイントを前に置いて、思いっきり行った。上がり過ぎかなと思ったけど、伸びてくれました」

 前日11日だった。6回無死一塁の走者として、岩本の左中間への二塁打で一気に生還。そのときのクロスプレーで、左ふくらはぎを負傷した。一夜明けて痛みが増幅。全力疾走をすると、肉離れを起こす可能性もあったため、試合前に監督に「スタメン落ち」を申し出た。レギュラーの責任感が、お立ち台の「指名」も辞退させた。

 驚きは1度だけではない。6回に1点を勝ち越し、なおも1死満塁。今度は丸と同学年の菊池涼介内野手(23)が、左中間スタンドに飛び込む自身初のグランドスラム。1試合2本の満塁本塁打は、球団史上3度目のことだ。

 「送球ミスを2つしていたので、外野フライでもなんとか1点と思っていた」

 みそぎの1発だった。5回と6回にいずれも失点につながる失策を犯した。華麗な守備で貢献してきた伏兵がバットで取り返した。

 野村監督も「極端すぎる。満塁本塁打2本は期待していない。ぜいたくだな」と驚いた。交流戦前最終戦での快勝に「やっと、眠れるよ」と本音がこぼれた。【鎌田真一郎】

 ▼広島は4回に丸、6回に菊池がプロ入り初の満塁本塁打。同一チームが1試合2本の満塁本塁打は10年6月20日日本ハム以来22度目のプロ野球タイ記録。広島では78年4月20日中日戦、05年8月10日ヤクルト戦に次いで3度目になる。2人ともプロ入り初の満塁弾のケースは、56年9月23日毎日の葛城と鈴木正、64年3月22日大洋の伊藤と重松、77年4月17日近鉄の島本と石渡に次いで36年ぶり4度目。