<中日4-3楽天>◇17日◇ナゴヤドーム

 タケシ、最高!!

 44歳6カ月の中日山崎武司内野手(44)がプロ野球史上最年長の逆転サヨナラ安打を放ち、古巣楽天を沈めた。9回1死二、三塁から楽天青山のシュートをとらえ、チームに今季42試合目で初のサヨナラ勝ちをもたらせた。チームは交流戦3連勝でリーグ4位に浮上。どうやらこの勢いは、本物かもしれない。

 ミネラルウオーターの歓喜のシャワーを頭から浴びたベテラン山崎はガハハと笑った。涙で感慨に浸るのは似合わない。ガキ大将には44歳になっても笑顔が似合う。「どうやって打ったんだろう。あそこのシュートはオレ、打てないのに」。2年前、自らをクビにした星野楽天に浴びせた強烈なサヨナラ打。「イーグルス相手なんで燃えてました」。在籍時に厳しく接した青山のシュートを完璧にとらえた。

 これ以上ない場面だった。創設時から主砲として引っ張った球団に、拾ってくれた中日のユニホームで対峙(たいじ)した。中日に交流戦3連勝を運んだ一打には、相手への特別な思いも詰まっていた。

 「恩返し、少しはできたかなと。楽天ファンの人は『バカヤロー』と言っているかもしれないけど、恩返しするためにも『元気だよ』とアピールできたかな。明日東北の人も『山崎が打ったんだ』と新聞見て思ってくれたらいいね」

 どでかいあの体、奔放な発言とはうらはらに繊細な一面を持つ。次打者席で待つ間「びびっていたり受け身になっていると、後ろから何かに乗っかられたような重さを感じる。それが来た」と、プレッシャーに押しつぶされそうになった。

 打席に入り、青山と向き合うわずか数秒。構えるまでに「青山の間合いにならないように」といつもより長く間を取った。相撲でいえば立ち合い。相撲取りのようなタケシの立ち合い勝ちだった。

 プロ27年生のすごみが生んだ一打に高木監督も大喜び。普段「山崎」と呼ぶがこの日は、愛を込めたのかなぜか「タケシ」といい「最高の場面ができてタケシがサヨナラ打。交流戦でタケシを何とかと思っていたから最高」とはしゃいだ。

 DH制のある交流戦から1軍に戻ってきた44歳は元気いっぱい。14日の日本ハム戦でセ・リーグ最年長三塁打をマークしたばかり。お立ち台の笑顔がまぶしかった。【八反誠】

 ▼44歳6カ月の代打山崎が逆転サヨナラ安打を放った。44歳以上でサヨナラ安打を記録したのは56年岩本(東映)が4本打って以来、57年ぶり史上2人目。44歳6カ月は56年9月30日大映戦、10月4日西鉄戦の岩本に並ぶ最年長サヨナラ安打となり、セ・リーグでは75年6月14日アルトマン(阪神)の42歳2カ月を38年ぶりに更新した。56年岩本は4本とも同点からで、逆転サヨナラ安打としては90年9月9日門田(オリックス)の42歳6カ月を抜いてプロ野球史上最年長となった。