<日本ハム7-3巨人>◇19日◇札幌ドーム

 日本ハム栗山英樹監督(52)が執念のタクトで、昨季日本シリーズで敗れた巨人を打ちのめした。19日、札幌ドームにセ首位をいく球界の盟主を招いた一戦。3回に陽岱鋼の2戦連続6号2ランで逆転すると、4点リードの6回には西川にスクイズを命じて追加点を奪い、今季4勝負けなしの内海を攻略した。23日ヤクルト戦では、二刀流ルーキー大谷が投手デビューする本拠地4連戦。その初戦で天敵をたたき、最下位のチームに勢いをもたらした。

 三塁ベンチから正面に見えるオレンジ色が、奥深くに眠っていた闘志を呼び起こしてくれた。昨季日本シリーズで敗れた巨人、それもエースの内海を相手に、11安打7得点で快勝。最下位に低迷している現状を、忘れさせた。栗山監督は「強いチームに体ごとぶつかっていくのが、こういうときには必要。ガムシャラな空気になったよね。それをつくりたいと思っていた。生かしていきたい」。23日のヤクルト戦では大谷の投手デビューが決まっている、注目の札幌ドーム4連戦。その初戦を、幸先よく滑り出した。

 1点を先制されながら、3回に陽岱鋼が2ランを放って逆転。その後も8、9番の大引、鶴岡でチャンスメークし、上位打線へつなげる好循環で、小刻みに得点を重ねた。今季最多3万7688人のスタンドが、日本シリーズのときと同じように、本拠地アドバンテージを生みだした。

 巨大戦力の巨人を苦しめながら、最後は手が届かなかった日本一。頂上決戦での敗戦は心から悔しかったが、指揮官はチームに足りないものを、見つけることができた。「体の強さ」「野球脳の進化」「人間力のアップ」。選手たちには、オフのミーティングで話した。

 「野球脳」とは、状況に応じた最善のプレーを思考できる能力。同監督は「このケースは何を狙うのかとか、ヒットじゃなくファウルで粘って四球がいいとか。野球の考え方を進化させる必要がある」と言った。4点リードの6回1死一、三塁の場面。打席に立った西川は、初球にセーフティースクイズを成功させた。相手は1度火が付くと止められない巨人打線。栗山監督は「あの点差でも怖さしかない」と言う。21歳の西川が、追加点の重要さを感じ取り、見事に実践してみせた。

 カード初戦を取り、二刀流ルーキーの投手デビュー戦へ向けても、大きな弾みがついた。ベンチで先輩の奮闘を見守った大谷は「すごくたくさん(客が)入っていただいていたし、勝てて良かった。連勝できるように頑張っていきたいです」。帰路に就くファンの表情は、この日の満足感とこの先の期待感で、どれも明るかった。【本間翼】