<巨人2-3ソフトバンク>◇29日◇東京ドーム

 巨人阿部の不敗神話がついに崩壊した。阿部慎之助捕手(34)が東京ドームで本塁打を打った試合は、10年7月4日阪神戦から2分けを挟んで37連勝中だった。ソフトバンク2回戦でも3点を追う4回に反撃の13号ソロを放ったが、2-3とあと1歩届かなかった。先発沢村は5回3失点降板で4敗目。チームも2連敗を喫した。

 物事には始まりがあれば、終わりもある。ついに「阿部神話」が崩壊した。阿部が本塁打を放ったのにもかかわらず、巨人は負けた。「記録じゃないんだから、いいんじゃないの」。阿部は気にとめなかったが、3年間にわたってつないできたものが、途切れてしまった。

 この日の1発も貴重な一打であったことには違いない。3点を追う4回。初球の117キロカーブに体が反応した。試合の流れをガラリと変える本塁打。「うまくタイミングを合わせることができた」と納得の一打だった。相手の守備の乱れもあり、1点差まで追い上げた。神話は生きている、と思わせた。反撃のきっかけになった。だが、届かなかった。

 前夜の試合後、原監督は「もう少し大胆に作戦を立てるべきかもしれない」と口にし「少し選手を迷わせているかもしれない」と首脳陣の代表として反省の弁まで述べた。その分、チームはこの日の試合に、強い意識を持っていた。阿部、村田、長野ら、主力のほとんどが早出をして打撃練習に励んだ。阿部は、何かを吹っ切ろうとするかのように、通常とは逆の右打席に立って気分を変えた。

 首脳陣は打順を大きく入れ替えた。1番に前日3安打の坂本を据え、3番には好調の亀井を抜てき。1番だった長野は5番に置いた。2、3、4番に左打者を配し、右の好投手が多いソフトバンク投手陣の攻略をもくろんだ。「ペナントレースを戦う上で、少し変えた方が、流れの部分でいい方向にいくのではないか」と、原監督は狙いを説明した。

 勝利には届かなかったが、チーム全体として戦う姿勢は示せた。「今日くらいの集中力で戦ってくれれば。結果的に負けはしましたが、いいものは出ていたと思います」。原監督は結果を度外視して、手ごたえを口にした。神話は終わった。だが、終わりは始まりでもある。敗戦の中から、巨人が新たなスタートを切る。【竹内智信】