<広島1-8日本ハム>◇29日◇マツダスタジアム

 「野手・大谷」の“連敗”がようやくストップした。日本ハムの二刀流ルーキー大谷翔平投手(18)が5番右翼で先発し、右へ、左へ2安打を放った。野手としては3試合連続のマルチ安打となった。打撃好調の一方で、野手としての出場試合でチームは10連敗と、ありがたくない珍記録も更新していたが、ついにピリオドを打った。6月17~20日の予備日の広島戦(マツダスタジアム)で実現する可能性が高い「本格二刀流」へ、自らのバットで勢いづけた。

 ずっしりと重かった肩の荷が下りた。大谷が、端正なマスクが崩れる満開の笑顔で勝利のハイタッチに加わった。「野手・大谷」での連敗が10で止まった。野手として3試合連続マルチ安打を含めて3出塁に、プロ入り初得点。フォア・ザ・チームの働きをした実感が、湧き上がった。「すごくうれしかったです。チームも負け越しているので気になってはいましたけれど、自分が出た試合は頑張ろうと思っていました」。苦悩から抜けた18歳は、無邪気に胸の内を明かした。

 責任感を一身に背負い、トップギアに入れた。1回1死からの第1打席。直前で中田が豪快な3ランをかけた余韻が残る中で、冷静に仕留めた。広島大竹の144キロ、ボール気味の外角直球をさばく。2ボール2ストライクと追い込まれ、相手バッテリーは1発の直後で長打警戒の場面。その危険性が少ない外角との読みが、少なからずあった。「できれば逆方向にと思っていました」。軽く打って、左前へ運んだ。2戦連続で5番に抜てきされた才能を、思考の底力でも証明した。

 クレバーさを結集した。3回2死一塁の第2打席では初球のスローカーブに反応。捉え損ねたが一、二塁間をゴロで抜いた。「(カウントで)追い込まれるまでは長打」という信念を貫き、迷いないフルスイング。前打席の安打が直球だけに、変化球で入るとの配球のセオリーにも素直に従った。5回は四球。プロ初得点を記録した7回には内野安打とジャッジされてもおかしくない、投失で塁に出た。「ホームにかえったの初めてでしたっけ?」。記憶を呼び起こせないほど、無我夢中で最下位に低迷するチームを鼓舞した。

 純な思いは、行動にも表れていた。宿舎の一室に設けられた野手ミーティングの会場に一番乗り。広島先発大竹らの映像に見入っていたという。二刀流だけに投手として調整している際はバッテリーミーティングに参加。高卒新人なら、頭が混乱してしまうような苦労と負担がある。天性のセンスに頼らず、舞台裏でも怠らない努力。栗山監督が「翔平が頑張らないといけない」と託した使命を、全力でまっとう中だ。

 日本ハムが未来を託す大谷、中田の「ON」が競演しての快勝。主役の1人になった大谷は、6月1日中日戦(札幌ドーム)で投手として2度目の先発登板する。かつて花巻東時代のチームメートには「自信があるのは打者、やりたいのは投手」と漏らしたことがあるという。洗練された野手として、スッキリと連敗街道にケジメをつけた。覚醒を誓う投手で、プロでの道筋をつくる。【高山通史】

 ▼大谷が今季6度目の1試合2安打。2試合連続マルチ安打は初めて。左投手に3打数0安打の大谷だが、これで右投手に43打数16安打の打率3割7分2厘。今季、右投手と10打数以上対戦している日本ハムの打者では中田と今浪の3割3分3厘を抑え、大谷が対右投手の最高打率。この日は1本目が左安打で2本目が右安打。大谷の方向別安打数をを出すと、

 方向

 内

 左

 中

 右

 安打

 2

 6

 2

 6

 外野へ飛んだ安打は左6本、右6本と打ち分けている。