<楽天3-1西武>◇13日◇Kスタ宮城

 マー君スタイルで8勝目を挙げた。楽天則本昂大投手(22)が、6回1失点で、先発では6月6日以来の白星を手にした。1回に先制されたが、その後は粘りの投球。6回無死一、二塁のピンチは3者連続三振で切り抜けた。学生時代からマスクは田中似と言われる。開幕12連勝のエースの投球を手本に成長し、投球回数では新人時代の田中に並ぶ勢いだ。田中とともに首位のチームを支えている。

 ピンチでギアチェンジ。まるでマー君だった。粘りの則本が真骨頂を発揮した。2点勝ち越して迎えた6回だ。安打と四球で無死一、二塁。そこから目つきが変わった。宝刀スライダーと140キロ台後半の直球を駆使し、3者連続三振。苦しんだ序盤とは別人のような投球だった。「なんとか抑えようと、気合を込めて一生懸命投げました」と興奮気味に振り返った。

 受け身にならず、内角をグイグイ突いた。前回の6月27日の西武戦では乱闘騒ぎがあっただけに、死球は避けたいところ。それでも「内角を投げないと抑えられない。(5回に)渡辺直人さんに死球を当ててしまったけど、怖がらずに攻めていかないと」。決して逃げなかった。6回2死で空振り三振を奪うと、投げた勢いそのままに体を回転させ、こん身のガッツポーズ。「ヨッシャー!」と雄たけびを上げた。

 雄たけびと言えば、エース田中の代名詞。則本は三重中京大時代から田中に顔が似ていると言われ、「マー君2世」と話題になったが、投球まで似てきた。ピンチで力を入れ、得点を与えないのが田中のスタイルだ。この日の6回の投球はまさにそうだった。選手ロッカーは2つ隣で会話も多い。その中で1つ、田中からの助言で忘れられない言葉がある。「できないことをするんじゃなくて、自分のできることをする」。シンプルな言葉だが「意味があるというか、常に肝に銘じてます」と則本の指針となっている。

 そんな先輩をしのぐような鉄腕ぶりも発揮している。前半戦最後の登板を終え、投球イニングは107回2/3まで到達。田中もできなかったルーキーでの200イニング投球回に迫る勢いだ。「前半戦(ローテーションを)守れたのは収穫ですけど、後半戦いなかったら意味がないので」と気を引き締めるように言った。

 星野監督からは「もっと打たせてとらないと。最低7回は投げてほしい」と注文をつけられたが、「課題を克服してもっと貯金を作りたい」と言った。チームは首位を快走中。後半戦に向け、田中と則本の2本柱が確立できれば、悲願のリーグ優勝も見えてくる。【斎藤庸裕】

 ◆新人の200イニング以上

 最近では11年沢村(巨人)が200回ちょうど投げている。パ・リーグでは235回投げた90年野茂(近鉄)が最後で、90年以降に新人で200回以上は野茂と沢村の2人だけ。20勝した99年上原(巨人)は197回2/3で、16勝の99年松坂(西武)は180回、11勝の07年田中(楽天)は186回1/3だった。